自己と他者 

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白石一文『僕の中の壊れていない部分』

2006-06-30 02:48:45 | 小説

白石一文『僕の中の壊れていない部分』(光文社文庫)

を読んだ。人間にとって興味深い、生と死についてが内容である。

男性と女性は結ばれて、子供を生む。つまり人を生む。人は必ず死ぬ。死ぬのに人を生む?人間は、こうしたことを繰り返してきた。改めて、興味深く思った。人間は死を再生産しているともいえるのだから。

「自殺したいと考えている人」、「なぜ、人を殺してはいけないのか?」なんて疑問を持っている人は、これを読んでからもう一度生と死について再考・自問して欲しい。

著者はこう書いている。

P.243「~さんは自分で死んだわけじゃない。自分を殺してしまっただけだ。他人を殺すように自分を殺したんだ」

~略~「彼は自分に殺されたんだ。人を殺すことがいけないように自分を殺すことも罪だと僕は思う。というより、自分を殺すことは他人を殺すことと同じなんだ。自分を殺すことを認めてしまえば、他人を殺すことを否定できなくなる。戦争なんてその典型だよ」

「でも戦争は人を殺すための行為じゃないの?」

「そうじゃないよ。彦根に行ったときも言ったと思うけど、戦争は自分の死を前提に成り立っている殺人だからね。自分がいつ殺されてもいいと思っていれば、他人を殺すことに対する罪悪感なんて微塵もなくなるさ」

人は誰でも100%死ぬ(by養老孟司氏)存在であるからこそ自殺も他殺もする権利を有していないのである。というか許してはいけないのである。この世に生まれついた時点で生物は例外なく、皆、死に向かっているからである。