森博嗣『ダウン・ツ・・ヘブン』(中央公論新社)を読んだ。
シリーズ第三作目。
以下、メモ
まだ、読んでない方はご遠慮ください。
主人公クサナギが同職の後輩パイロットにレクチャーする場面
「みんなはコックピットの様子をここで見ていたのですね?」
~
「それはほとんど、参考になりません。普段は、あんなふうに優雅に飛んでいるわけでは全然ない。右を見て、左を見て、振り返って、風防に顔を押し付けて、必死になって相手を探している。Gがかかれば、さらに自由がきかない。それでも、見なくてはいけない。そして、その合間に、ときどき考える。」
「つまり、相手も、必死になって見ているんだ。必死になって、考えているんだって、そう考える。同じだ。同じコックピットが、空にもう一つあって、向こうも必死になって、飛行機を操っている。どちらか一方だけしか残れない。どちらかは飛んでいられなくなる。だから必死だ。でも・・・・、この際だから、どうせなら楽しもうって思う。一緒に手をつないで踊ろうって・・・・。ポールが立っている周りを回っていて音楽が聞こえてきて、本当に体の中から動きが浮かび出てくるような、踊りたくなるような、そういう感じになる。手を繋げば、相手の気持ちがわかって、相手の動きが自然に見えてくる。そう、そんな感じです。ごめんなさい。きっと、役には立たないでしょうね」
~
「どうか、立派に戦って下さい。きれいに戦って下さい。誰のためでもありません。自分自身のために」
そういった瞬間、僕の頭にはティーチャが浮かんでいた。暗い部屋の中で、煙草を吸っている彼だ。
拍手が起こった。でもずいぶん遠くから聞こえるように感じられた。」
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