僕、お店のカードを作るのは好きではなくて、あまり作らない。
けれどマイナンバーカードは持っている。
知り合いのおじさんが作ったと聞いて僕もなんとなく作りたくなった。
ちょっと、そのマイナンバーカードの情報を一部改める必要が生じて役所に行った。
かかりの女の子が出てきて、「向こうの柱の隣のカウンターに行ってください」と僕に言った。
ああ、感じのいい子やんと僕は思って女の子が指定したカウンターのところに行った。
そこで女の子は「ここに、最初に考えた番号を入れてください」と言って、僕の目の前にある、モニター画面とテンキーに目配せした。
「最初に考えた番号って?」と僕は言った。
すると女の子の顔が急に不機嫌になって。
「最初に考えた番号を入れてください」と同じ言葉を繰り返した。
僕は、あかん、と思った。これは女の子に質問すればするほど女の子はますます不機嫌になり、しまいに、僕と女の子で喧嘩になってしまう可能性があると思った。
それで、もう「ままよ」とおもってその場で適当に考えた番号をテンキーに入力した。
するとモニター画面に エラーと出た。
「あっ、あかんわ」と僕は言った。
女の子はまた「最初に考えた番号を入れてください」と言った。
それで、僕はまた適当に番号をテンキーに入れた。
またエラーが出た。
「あかん、だめだ」と僕は言った。「最初に考えた番号忘れました」と僕は続けた。
「では、今、考えた番号を入れてください」と女の子は言った。
それで僕はまた適当に番号を考えて入力した。
今度はエラーが出なかった。スッとモニターの画面が次に進んだ。
「次に、ローマ字と数字を組み合わせて考えて入力してください」と女の子は言った。
僕はローマ字と数字を考えて入力した。
また機械がうまく反応してモニタの画面が次に進んだ。
「これで終わりです」と女の子は言った。
ありがとうございます と僕は言った。
結局、女の子の言葉の意味はわからずじまいだったけれど、結果オーライでなんしかうまくいった。
役場の出口を出る頃に、一連の流れを振り返って僕は大体のことを理解した。
多分、女の子が「最初に考えた番号を入れてください」と言ったのは、マイナンバーカードを作ったときに登録した、パスワードを入力してください という意味ではなかったのか。
そして、僕が適当に入れてエラーが出たので、女の子は新しいパスワードを入力するように僕に促してそれで結果オーライになったと。
きっと、そういうことだと思う。
新聞などに、最近、若い子は、ラインなどで、「今、電車」「これから降りる」というようなやりとりばかりしているうちに、まともな文が書けなくなってしまっているというのが結構深刻な問題だということがときどき指摘されている。
今日の、女の子もそういうパターンで、物事を一般的に説明することができない可能性が高いと思った。
できないから、質問されると不機嫌になって、相手に質問させないような雰囲気を作って、結果だけつじつまが合うようにする。
きっとそのパターンだと思った。
しかし、最近、役場に、本当に、公務員なのか、単なる短期のバイトの子なのかわからないような応対品質の子が増えたなと思う。
自分がこれから、役場にいろいろ頼っていかなかればならない年齢になってきて、こういうのってなんともいえない不安を覚える。
一方で、年寄りの方でも、結構、役場の子に、横柄な口の聞き方ををする人もいる。
そういう、年寄の相手ばかりしているうちに、知らぬ間に年寄りを叱りつけるようなものの言い方がくせになっているような子もいたりする。
本当に、困ったことだと思う。
ただ、どんな職場にも、親切な人はいる。
そういう人をいち早く見つけて、なるべくその人に頼むようにするとか、あえて、その場の流れにまかせて、結果オーライでもいいから、物事が通るようにしてもらうとか、波風を立てずにやっていく工夫も必要だなと思う。
結果オーライというのは子供の使いと同じことで、いざというとき応用がきかないから怖いといえば怖いけれど、、、。
僕は、人に不親切にされたときには、「捨てる神があれば、ひろう神もある」という言葉を自分に言い聞かせることが多い。
たまたま、あの人は僕に不親切だったかもしれないけれど、みんなが僕に不親切なわけではない、きっと親切にしてくれる人もいるはずだと。
そう思って、なるべく気持ちを切り替えるように心がけている。
それはともかく、一日いちにち無事に過ぎますように、それを一番に願っていきたいと思う。