2021年
初読み本
畠山健二著
「本所おけら長屋15」
泣いて笑って、そしてほっこり
初読み本にぴったりの本でした
はる なつ あき ふゆ
と季節が入った章です
「あきなす」の章
勤め先の米問屋の、嫁、姑問題に巻き込まれる万造
万造に頼み事をする女将
「仕事なんか恒吉の半分もしてないじゃないか。
お前を飼っているのは、こういうときに役立つからさ」
ハハッハ大笑いしました
この章には、「金太」が特別出演
瞬時に落語の世界に突入です
最後の「ふゆどり」では
島田鉄斎がおけら長屋で暮らすようになったいきさつが描かれています
藤沢周平の世界のような雰囲気に引き込まれます
鉄斎の話を聞いた万造、松吉、お染にとっては、はじめて聞く話ばかりだった。
「そんなことがあったんですかい」
万造が溜息まじりに呟く。
そうなんだ、そんなことがあったんですね鉄斎先生と
読者も呟いてしまいます
鉄斎に真剣で試合をいどむ涼介
お栄の作ったものを口に入れ、その味に温かさを感じます
そこで松吉の言葉
「なぜだかわかりますかい。
おけい婆さんも、この店のお栄ちゃんも、作ってる人の心が温けえからですよ。
それに、塩でも砂糖でも出汁でもねえ、とっておきの隠し味があるんでね」
「とっておきの隠し味・・・」
「涙ですよ。長屋暮らしの貧乏人なんてのは、
みんな心の中に悲しみや苦しみを抱えて生きているんでさあ。
だから、鍋の中に涙が一粒、流れ落ちるんで。
心根の優しい人には、その涙の味がわかるんですよ」
松吉さんに時々こういうセリフを言わせる畠山先生、ずるいですよ~
あ~正月早々
気持ちのいい読後感を味わいました
まだまだ続いて欲しいおけら長屋です
「