朝井まかて著
「残り者」
読み終わりました
こんなことあるわけないよな~
いや、もしかしたらあったのかもな~
なんて想像をかきたてられる小説です
慶応4年 4月10日
天璋院が西丸の大奥を立ち退く日のこと
二百畳を超える大広間に170人ほどの女たちが集められている
「ゆるゆると、急げ」
と言う言葉を聞き、みんなは我先にとお城を出た
そんな中、呉服之間の「りつ」は、皆とは違う方向に行く
仕事場に戻った
ここで苦しいこと嬉しいことが色々あったと感慨にふける
そこへ、天璋院が可愛がっていた猫を探して御膳所の「お蛸」が現れる
一緒に猫を探すはめになるりつ
もう誰もいるはずもない大奥にまた1人御三之間の「ちか」がいた
ちかは高い木に登って下りられなくなっていた猫を助ける
りつは、このふたりを連れて城を早く出ようとするが
なかなか上手くいかない
そうこうしていたら御中臈の「ふき」と呉服之間の「もみぢ」もいた
この5人の残り者たちのお話です
それぞれの来し方が語られ、なぜ城に残ったのかを話し始める
この女性たち、主人公のりつ以外はとても個性的
もう読んでいくうちに
この女性たちと一緒に広い広い大奥の中を着物を着て歩いているような気になります
ワクワクします
大奥の仕事は完全分業制の縦社会
ここで生き延びてきた女性は強くたくましく根性が座っています
最後の数ページは、お城を出た後の彼女たちの今が書かれてあって
あ~やっぱり元気にたくましく生き生きと生きていってるんだな~
と嬉しくなります
くすっと笑ってしまった文章です
りつには下に妹が2人います
主人公りつの口の悪い伯母がこの3姉妹のことでこんなことを言います
「まったくもって、静は産み分けてしもうたものよのう。
そなたは真面目ながらおとなしいし、
真乃は気丈夫だが少々、上っ調子なところがある。
由理は器量良しだが、頭の巡りは姉らにかなわぬだろう。
誠実で気が勝ち、頭も見目も良い1人を産んでおれば
天下さえ獲れたであろうに、
姉妹三人にそれを振り分けてしもうた」
まかてさんの小説は本当に楽しいです