西條奈加著
「隠居すごろく」
読後感が最高の本でした
嶋屋徳兵衛は巣鴨に店を構える6代続いた糸問屋の主
「わしはこのたび、嶋屋6代目の主を退いて、隠居することにした」
と、家族、店の者に引退宣言をする
徳兵衛は、仕事一筋
お店第一
節約節約
無駄なお金は使わない
よって、無駄な人付き合いもしない
趣味もなし
そんな彼が田舎に広い屋敷を買い移り住む
わしの人生はこれで「あがり」だなと思い
あこがれの隠居生活をスタートする
が
有り余る時間をどう過ごしていいのかわからずすぐに暇を持て余してしまう
そんな時、8歳の孫千代太が彼を訪ねて来る
仕事一筋だった彼は、孫さえ可愛がった記憶がない
思いがけない千代太の出現で
隠居すごろくのサイコロが右に左にと
一休みする暇さえ与えず転がりはじめる
千代太は、野良犬を可愛そうだと拾ってくる
次は捨て猫
徳兵衛はそういう類が大の苦手
しかし、この孫に嫌われたくない
そこで、彼は千代太に言う
「おまえの気持ちは、決して悪いことではない。だがな、どうせなら犬猫ではなく
人のために使ってみてはどうだ?」
我ながらうまいことを言ったと、悦にはいるのだが
この言葉を機に徳兵衛は千代太に振り回されることになる
千代太は小汚い子どもをふたり連れて来る
何か食べさせてやってくれと言うのだ
そしてそういう貧しい子どもが隠居所にどんどん集まってきてしまう
しかし、この子どもたちやその親たちと関わるようになってから
徳兵衛の心境が少しづつ変わっていく
その過程が読んでいてもとても面白い
子どもたちを教えているつもりが
彼らに教えてもらっていることも多い
教え、教えられる徳兵衛
最後に彼はこうつぶやく
「千代太はわしにとって、さいころであったのだな」
二枚目の双六を開いたときには、何もない真っ白な紙っぺらだった。
千代太がさいころをふり、道を示し、祖父の手を引き、ときには懸命に尻を押しながらここまで連れてきてくれた。
本当の意味で、人生には「上がり」がない。
だからこそ面白く、甲斐がある。
人の喜ぶ顔が嬉しいと気づいた徳兵衛
定年後、町内会のことにも全くかかわろうとしない男性も多い昨今
この本を沢山の定年男子の皆さんに読んで欲しいな~と思いました