硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

つばめ。

2014-06-22 20:03:21 | 日記
五月の初めごろに燕が飛来し、我が家の軒先の樋に巣をかけ始めた。それを観た母が「軒先が糞で汚れるから落としておいて。」と言うので、積み上げかけた泥を排除した。毎年の恒例となっているので仕方なしと思っていたが、戻ってきた燕は「ちちちちちっ」と啼きながらホバリングして驚いている様子であったが、ひるむことなくそのまま復旧にとりかかり始めた。

なかなか粘るものだと、思っていたら家の裏が田んぼである為にあっという間に基礎が出来上がり、翌日には一度排除した高さまで泥が積み上げられていた。それを観ていた妻が「また作っているから早く取らないと。」と言うので、しぶしぶ排除したみたものの、燕は諦めることなく粘り強く、また一から泥を積み上げるので、「もういいじゃないか。汚れたら掃除すればいいだけの事だ。」といって、巣作りを承認した。

2日ほどで工事が終わると卵を産む時期が近かったのであろう。浅めの巣に雌の燕がじっとしている姿が見てとれ、もうすぐ生まれるのであろうかと玄関を通るたびにその様子を観察していた。

6月に入り、ある日妻が「卵の殻が落ちていたよ。」というので覗きに行くとどうやら無事に雛がかえったようだが、猫達もその様子に気づいたらしい。猫達は巣を掛けている時から幾度となく猟を試みていたが、巣までは随分高さがあるので、垂直の柱の半分くらいまでしかかけのぼる事が出来ずに半ばあきらめた様子であったが、それでも時頼近くまで行っては首を上に向け巣の様子を窺っていた。

やがて雛は成長し、親鳥が忙しそうにかわるがわる雛に餌を与えるとピイピイと小さな鳴き声も聞こえてきて心を和ませた。
しかし、今日帰宅して巣の方に目をやると親鳥が静かに巣の近くの雨戸の上に留まって巣をじっと見つめていた。様子がどうもおかしい。すると妻が「今日雛が巣から落ちてきて猫が咥えてきた。」と言った。
それでも何匹かいるであろうから「後の残りは?」と聞くと、どうやら次々に落下したらしい。たしかに、浅すぎる巣であったので、雛が大きくなり動くとどうなるかまでは燕も予想がつかなかったようだ。しかし僕が巣を落とさなければもっと立派な巣が出来上がっていたのではないかと思うと少しばかり心が痛んだ。

猫は何事もなかったようにニァーと可愛く鳴いて愛想を振りまいてはいるが、やはりネコ科の猫なのである。いくらキャットフードを与えていても本能までも無効にする事は出来ない。しかも、わざわざテラスまで持ってきて行われる惨劇は猟の成果の度に繰り返されている。

妻は動かなくなった雛を猫に見つからぬよう回収し川へ水葬したのだという。事実を知った僕は表に行き、空になった巣を悲しそうに見つめる親鳥に、

「残念だったね。また来年おいでよ。」と声をかけたが、二羽とも首をかしげて一向にその場を離れようとしなかった。