硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 終末を超えて。

2020-04-28 20:29:27 | 日記
「目で見える事が全てであるなら、人の死は何だと思う。その死に人が何も見えなくなるとなぜ言い切れる。」

確かに、言い切れることは出来ない。人の死は生きている者の主観でしかない。澪は言葉に窮した。

「分からぬであろう。では、改めて問う。なぜ、君は私の前に立ちはだかる。それが、宿命とするなら、なぜ、君は、怒っている? 愛と呼ばれるものを知っているからか? それとも、君が正義だからか?」

「・・・・・・わからない。」

「わからない・・・か。まあいいだろう。君は、今までの者と違い、考える者のようだな。」

二人の間に、沈黙が訪れる。澪は考え続けたが、正解がない事だけは分かった。それでも、その者に、なにかを語らねば、前には進めないと感じ、手探りで言葉を絞り出した。

「僕は・・・。父の言葉を信じてきた・・・。代々の人々もそうしてきたのだと思う。それが習わしだったから疑わなかったのだと思う。恐らく・・・、僕の先祖はあなた達と戦ってきて、なにかを得たから、地球に留まり・・・。プログラムとするなら、機能するために存在し続けた・・・・。もし、それが僕にとって、先へ進む手続きだとしたら・・・・・・、正義が何であるかを問うより、ここで、あなたと剣を交えなければならないのではと思う。」

「なるほど。賢明だ。では、どうする。」

澪は、その者に一礼すると、剣を上段に構え、「お手合わせ・・・願います。」と言った。

「いいだろう。かかってくるがいい。」

その言葉に、圧倒的な強さを感じた、畏怖といっても過言ではなかった。剣を持つ手に力を入れると、初めて武者震いを感じた。