硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 終末を超えて。

2020-04-19 20:17:12 | 日記
「これは。」

自身の意識と身体が分離しているのが分かった。意識はあるが、身体はもう一人の誰かによって動かされているようでもあった。しかし、不思議と手も足も自身の意志通りに動き、違和感はあるが、コントロールできないものではないと思った。

「平常の身体のこなし方を戦いのときの身のこなし方とし、戦いの時の身のこなし方を平常と同じ身のこなし方とする・・・か。」

伊佐木は、意を決した澪を見て、「決して恐れるな。恐れは迷いを招く。迷いを招けば、覚悟が鈍る。覚悟が鈍るというは、戦いにおいて、死を意味する。よいな。」と、戦いの心得を説いた。

澪は大きく頷き、深呼吸をすると、矢の如く爆発音が響く都心へ向けて飛びたった。

空を飛ぶという感覚。鳥とはこういう感覚なのかと脳内のどこかで思うのであるが、身体は分離しているが如くに、大気を切り裂いて飛んでいるという感覚がなかった。

黒い煙に覆われる都心に近づいてゆくと、巨神兵の群れがゆっくりと歩行しながら、口から火を噴き、無造作に攻撃を繰り返しているのが見えた。未知なる生物を迎撃する自衛隊の戦闘機やヘリの重火器は、無力に等しく、隊員達の懸命な努力も、得体のしれない怪物を前には足止めする事すら困難な状況であった。

新宿や池袋の高層ビル群は崩れ去り、人々はパニック状態に陥り、巨神兵は人々のありふれた日常を一瞬のうちに奪い去った。

余りにも無残で無慈悲は光景を見て、怒りという感情が沸き上がってくる。

—なんて、ひどい事をするんだ。― と、無意識に澪の口から言葉がこぼれた。