物心ついた時から、父の祓詞を聴くと、身体の芯から力がみなぎってくる感覚を感じ取っていた。伊佐木は一通りの祓詞を唱え終えると、「澪、頭を挙げなさい。」と声をかけ、澪が顔をあげると、伊佐木は笏を澪の頭にのせ「解!」と言ったあと、最敬礼をした。
「父さん、いったい何を」
伊佐木は何も言わず神殿へゆくと、祀られているものを覆う白い布を静かに取り、綺麗に折りたたんだ後、三つの三方を澪の前に置いた。そこには、勾玉、鏡、短剣があった。
「これは? 」
「澪、今から言う事を心して聞きなさい。」
「はい。」
澪は背筋をピンと伸ばし、父の目を見た。
「須佐之家は澪も知っている通り古事記に登場する須佐之男命が祖である。しかし、それは、あくまでも表向きの話だ。」
「・・・表向き。」
「にわかには理解しがたい事であるが、我々の祖先は、人類が繁栄する前から存在していた。」
「はぁ。」
伊佐木の言葉は、澪にとって意味をなさなかった。
「仕方のない事だ。私も先代からこの話を聞いた時は、お前と同じだった。父さん、何を言ってるんだと。」
「・・・・・・・。」
「これは、門外不出、須佐之家の口伝のみで、伝えられている事である。日本の起源と言えば古事記だが、それは、我々の先祖が介入し、大安萬呂と稗田阿礼に想像させたものにすぎない。そうしなければ、世を収める後継者争いを始めてしまう事が分かっていたからであり、争いを最小限に留める為には、起源の物語を創造し、信じ込ませる必要があったのだ。」
「父さん、いったい何を」
伊佐木は何も言わず神殿へゆくと、祀られているものを覆う白い布を静かに取り、綺麗に折りたたんだ後、三つの三方を澪の前に置いた。そこには、勾玉、鏡、短剣があった。
「これは? 」
「澪、今から言う事を心して聞きなさい。」
「はい。」
澪は背筋をピンと伸ばし、父の目を見た。
「須佐之家は澪も知っている通り古事記に登場する須佐之男命が祖である。しかし、それは、あくまでも表向きの話だ。」
「・・・表向き。」
「にわかには理解しがたい事であるが、我々の祖先は、人類が繁栄する前から存在していた。」
「はぁ。」
伊佐木の言葉は、澪にとって意味をなさなかった。
「仕方のない事だ。私も先代からこの話を聞いた時は、お前と同じだった。父さん、何を言ってるんだと。」
「・・・・・・・。」
「これは、門外不出、須佐之家の口伝のみで、伝えられている事である。日本の起源と言えば古事記だが、それは、我々の先祖が介入し、大安萬呂と稗田阿礼に想像させたものにすぎない。そうしなければ、世を収める後継者争いを始めてしまう事が分かっていたからであり、争いを最小限に留める為には、起源の物語を創造し、信じ込ませる必要があったのだ。」