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「親なるもの 断崖」上下巻 曽根富美子 宙出版
昭和2年、北海道の室蘭にある遊郭に東北の寒村から16才の松恵を筆頭に4人の少女が売られてきた。飢えに苦しむ家族を救うため、自らの運命を受け入れやってきたのだが、身を売る生活に耐え切れず、初日で松恵は首を吊る。11才だった妹の梅は姉の墓を建てるため、女の地獄とも言える女郎の道へと進むのだった。遊郭で生きるしかなかった梅、武子、道子を待ち受ける運命とは・・・
ネットを始めて少しした頃、自分の地元を題材としているこの「親なるもの 断崖」という作品を知りました。検索すると北海道新聞のコラムでも取り上げられていたそうで、知るほどに「読みたい」という意識が強くなりました。ですが絶版・・・それがこの度文庫として復刊したので早速買っちゃいました
ここ舞台となっている地球岬は私も釣りに良く行くところ。太平洋にしては珍しく切り立った崖です。岬から眺める海は180度の水平線が広がります
ずーっと地元で過ごしてきましたが、室蘭に遊郭があったのはこの作品を知るまで知りませんでした。作中にも出てくるイタンキ浜にはタコ部屋労働の果て亡くなった人が埋められているというのは小学生の頃に教わりましたが、さすがに小学生にはその時代を影で支えていた「遊郭」のことは禁句だったらしい(苦笑)
曽根さんの漫画はお借りして数作読ませて戴きましたが、底辺で生きる女性、女であるが故の悲しみ苦しむ女性の姿を綺麗ごとを一切加えず、生々しいまでに書き上げる方だなぁと感じます。
遊郭を題材にした漫画は他にもありますが、ここまで掘り下げて底辺で生きる女たちを書いた作品があっただろうかとすら思う。親のため、家族のために売られた来たのに、まるで人として認められないような偏見と生活を強いられ、借金に縛られ死ぬまで逃れない女たち。
実際そういう生き方しか出来なかった女性も多かったんでしょう。
作中のお梅のように途中で身請けされる女性はまれで、道子のような最期をたどった女性も少なくなかったはず。仮に身請けされても一生「元・女郎」という偏見は付いて回ったのでしょうし・・・。
幕西遊郭の文書は殆ど残っていないそうですが、数年前に見つかった「精算帳」には1000円で家一軒立つ時代に娼妓1人平均の借金が963円、1カ月の稼ぎである「玉代(たまだい)」は11円から49円との記述があったそう。
そういう生活を強いられていた女性が江戸時代ではなく、昭和32年まで存在していたとはかなり衝撃でした
「自分が女郎でいることを当たり前だと思うな」
「自分が女郎でいることを疑問に持て」
その言葉に異常とも思える現状を不思議と思わない社会、現代にも通じそうな社会の中にある「麻痺」というものへの危惧が込められている感じすらします
賛否両論あるのかもしれませんが、目をそむけてはいけない1つの歴史を描いた傑作だと思いました。