かわずの呟き

ヒキガエルになるかアマガエルなるか、それは定かでないが、日々思いついたことを、書きつけてみようと思う

映画を見てきました。

2011-07-12 | 気ままなる日々の記録

 ここ数日、名古屋地方の週間気象情報は、すべての曜日がお日様マークで、これを見ているだけでうんざり! 昨夜「明日は、映画でも見に行こうか」「何かやってる?」「3D映画か『小川の辺(ほとり)』ぐらいだなあ」「3D映画ってメガネをかけて見るの? だったらそんなのいや」などという会話ののち、『小川の辺(ほとり)』を見ることになりました。連日「茶前仕事」に精を出してきたので、当面急ぎの農作業もないという判断です。

 映画を見るのは久しぶりです。たしか先回見たのは『剣岳』ですから、一年以上前ということでしょうか。私は藤沢周平のファンです。小説も沢山読んでいますし、映画化された作品はほとんど見ています。

 どのシーンも映像が美しく、すべての登場人物の立ち居振る舞いが凛としていて、見ている人の心を静めてくれます。主人公は雪深い貧しい藩の上級武士。東山が演ずる戌井(いぬい)は剣の達人。その戌井が、親友でしかも妹の夫である佐久間を「討て!」という藩命をうけるところから始まります。佐久間とはかつて御前試合で一勝一敗、三本目は豪雨のため延期という名勝負を残している相手です。佐久間は剛毅実直な男で、藩政の失敗により貧困にあえぐ民のために、奸臣退け真の藩政改革を断行するするよう藩主に直訴、藩主も目覚め藩政は改善されますが、藩主は面目を重んじ「礼をわきまえぬ振舞い」と佐久間を処分すろことにします。それゆえ佐久間は脱藩し妻とともに行方をくらましてしまいます。

 やがて、佐久間夫婦が江戸近郊の門前町に潜み妻田鶴(たづ)の手内職で生計を立てているという“うわさが”入り、藩命となったのです。
 田鶴も兄の影響を受けて幼いころから剣術を好み、かなりの腕前。戌井は、田鶴の性格から武士の妻として夫とともに自分に刃を向けるに違いないが、そのとき妹を切るかどうか悩みます。「その時は切れ」と諭す父、泣き崩れる母。

 戌井は奉公人の新蔵を連れて、道中約10日間の“うわさの門前町”へ向かいます。この道中の映像が実に美しい。遥かに銀嶺が連なる新緑の草原を歩き、巨木の間を縫う山道を登り、野草の間を流れる小川で喉を潤し、農家でわけてもらった芋を分け合って食べる旅でした。

 やがて庶民で賑わう門前町に着き、戌井は終日宿に身を潜め、新
蔵が顔を隠して田鶴を探します。ほぼ絶望かと思われたある日、手仕事をお店に納めにきた田鶴を見つけ、後をつけてついに小川の辺の炭焼き小屋のような隠れ家を発見、さらに二日に一度町に出ることも分かってきます。

 戌井が宿に身を潜めている毎日も立派です。本を読み日記をつけ、
近く林に入って剣の修行に励みます。水をかぶり精神の統一をはかり、もろ肌を脱いでの長時間に及ぶ訓練。戌井役を演ずる東山紀之の体美も、ご婦人はもとよりわれわれ男どもが見ても十分観賞に値します。

                             
 新蔵は、子どものころから戌井家で育てられていて、幼児期は田
鶴や戌井とは兄弟のように一緒に遊んだ記憶あり、そのころから田
鶴に思いを寄せていました。従って、田鶴の留守に戌井が佐久間を
討つことが出来るよう懸命に努力します。

 小川の辺での二人の激闘は見ごたえ十分、殺陣師の振り付けと二
人の猛練習のたまもの。草花が咲き乱れ清流が溢れる小川のほとり
という背景もみごとでした。

 やっと佐久間を倒した戌井は、佐久間の亡骸を屋内の運び丁重に
寝かせ、肩を震わせながら手を合わせます。このシーンもまたよい。

 そこへ田鶴が帰り、剣を抜き、夫の仇を討とうと兄に向います。
兄は妹を傷つけることなく妹の剣を奪うことに腐心しますが、腕の
立妹に何度も危うく切られそうになります。

 田鶴もそこは女、体力が尽き兄に刀を払い落されて川の流れに足
を取られて崩れ落ちます。戌井の目配せを受けて田鶴に駆け寄る新蔵。そしてこの映画はフィナーレへと向います。

   

 ここで王貞治さんが寄せたとかいう推薦文を掲げておきます。で、私の感想は? 私は藤沢周平のフアンですから大甘の感想になりますが、以下の通りです。


①藤沢作品はいつも、悩み迷いながらも身を捨てて義に殉ずる男を描きます。ここに魅力を感じます。今日の日
  本が失い、私も全くそんな勇気を持ち合わせていないからです。江戸時代の武士にとって「義」は世のため人
  にためと同義語で、自爆テロや無差別攻撃の対極にある概念だったと思います。

②この映画はつまりはハッピーエンド。そこがチョットものたりない感じです。身を捨て義に殉ずる生き方はも
 っと悲惨で、庶民の目からは変わり者にしか見え、心ある人のみが高く評価し、いぶし銀のような余生を
送ら
 れるのではないかという思いがあるからです。

③田鶴のキャラクター設定。映画では男勝りの女性という設定ですが、もう少したおやかな女性にした方がよ
 ったのではないかと思います。つまりまキャスティング・ミス。

④なんだかんだと言っても、お勧めです。乱暴ですが「日本が失った美しいもの」がそこにある感じがします。

 


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