空全体を薄い靄が覆っている。こんな日に星雲を狙ってもいい結果は出ない。だから撮影するのは初めから惑星と決めていた。と言っても、狙えたはずの木星はもう沈んでいる。残る対象は目の前の火星と後から昇って来た土星だ。火星は今おとめ座に居てα星スピカと並んでいた。地球との距離は9750万6400キロメートル。地球への接近を終えて少しずつ遠ざかっている。それでも明るさはマイナス1.1等級だ。一等星スピカを軽く凌いでいた。ただ視直径は14秒と、1度の240分の1しかない。何とか鮮明に撮りたくて、初め45センチかぐや姫で狙おうと思ったが、いろんな不具合をまだ修復出来ていない。やむなくいつも通りの8センチフローライト屈折を使うことにした。
この望遠鏡は焦点距離が600mmだ。惑星を狙うのにけっして有利な道具ではない。5ミリのアイピースにレンズを外した大きいほうのカメラを繋ぐ「拡大法」で撮影するのだが、ピントがなかなか合わない。手回しは難しい。電動フォーカスが要るなあ。あれ、赤道儀のコントローラーはどこに行った?そうブツブツ言いながら20枚ほど撮影。その画像の中から比較的鮮明で歪みの少ないもの6枚を選んで重ね合わせたのがこれだ。カメラ感度は3200に設定している。
穏やかに見える空でも、惑星を拡大して撮影すると結構ムニョムニョと動いている。それを沢山重ね合わせると、確かに撮像版の粒子は消えるが、同時に微妙な模様も薄れてしまう。よほど良い画像でない限りこの程度に留めたほうが良策のような気がする。
この火星。8センチで撮影した割には良い出来だと思う。
僕の惑星の画像は、一般の天体写真と違って地球と同じように北極側を上にしています。この表示が正しいと堅く信じているからです。天文ファンのみなさん、悪しからず。