昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[舟のない港] (六十六)

2016-06-30 11:02:04 | 小説
「母に会ったら‥‥」 全てを母に依存する生活を送っていたミドリだったが、今は仕事と家庭を両立させなければならない。 男の無造作な所作・言葉にも、ピリピリと神経をとがらせた。 全てに目を配り、かつての恋人に負けまいと孤軍奮闘の毎日だった。 . . . 本文を読む

デトロイト美術館展に行ってきました。

2016-06-30 10:46:47 | 美術展・博物館
先日、豊田市美術館で開催中だった、デトロイト美術館展に行ってきました。 お目当ては、当然ながらルノワールです。 ジャンヌ・サマー嬢にお目にかかって以来、大々大ファンになりましたので。 ぐすん、会えませんでした。 よくよく考えると、ジャンヌ・サマー嬢に会えたのはロシアのエルミタージュ美術館展でしたわ。 「座る浴女」が展示してありまして、代表作の一つだと紹介されていました。 正直のところ下半身肥大 . . . 本文を読む

[舟のない港] (六十)

2016-06-18 12:20:08 | 小説
「夕食後の団らんの時だったの」 ミドリは、ポツリポツリと事の顛末を話し始めた。 「母と妹の三人で、貴方のことを話してたの。 毎日お部屋に行って、お掃除をしたり、夕食の支度をしたりしていることを。 ここ二、三日は残業の連続やら、兄が迎えに来たりしてアパートに寄れないから、寂しいって。 冗談まじりの会話だったのに、急に道夫兄さんが怒り出したの。 『お前は、どういうつもりなんだ。 彼と結婚の約束を . . . 本文を読む

[舟のない港] (五十九)

2016-06-15 22:09:26 | 小説
辛い毎日だった。 炎天下の下、足を棒にしてスーパー・商店を回った。 一つの契約高が 数万円の仕事を取ることに、何度頭を下げただろうか。 急ぎの納品だと、まだ明けやらぬ早朝にチラシを届けたりもした。 夜になると、疲れ果てて泥のように眠りこけた。 ミドリは、相変わらずやって来た。 しかし、男の帰りが遅いことが多くすれ違いの日々が続いた。 そんなある夜、帰りが午前零時を回ってしまった。 鍵のかかっ . . . 本文を読む

[舟のない港] (五十七) 

2016-06-11 11:44:24 | 小説
男は、消えてしまいたかった。よりによって、今夜会うとは。 「どうなさったの? お疲れのようね。 ごめんなさいね、父がご迷惑をかけたみたいで。 会社をお辞めになったと聞いて、心配してましたのよ」 あの高慢な麗子の言葉ではなかった。 心底に心配しての言葉として男の胸に入り込んだ。 「わたし、あの後に父の勧めるままに、あの方の後妻に入りましたの。 貴方とのことも、快く『若さというものは、羨ましいもの . . . 本文を読む

[舟のない港] (五十六)

2016-06-09 19:06:33 | 小説
幾度かの転職後のことだ。 職業安定所の係員に、「プライドを捨てなければ、駄目だよ」と、窘められるに至った。 「そんなつもりはない!」と、強弁したものの、男自身も感じ始めていたことだ。 これといった資格を持たない男に、不況の風は冷たい。 . . . 本文を読む

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