「母に会ったら‥‥」
全てを母に依存する生活を送っていたミドリだったが、今は仕事と家庭を両立させなければならない。
男の無造作な所作・言葉にも、ピリピリと神経をとがらせた。
全てに目を配り、かつての恋人に負けまいと孤軍奮闘の毎日だった。
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先日、豊田市美術館で開催中だった、デトロイト美術館展に行ってきました。
お目当ては、当然ながらルノワールです。
ジャンヌ・サマー嬢にお目にかかって以来、大々大ファンになりましたので。
ぐすん、会えませんでした。
よくよく考えると、ジャンヌ・サマー嬢に会えたのはロシアのエルミタージュ美術館展でしたわ。
「座る浴女」が展示してありまして、代表作の一つだと紹介されていました。
正直のところ下半身肥大 . . . 本文を読む
ミドリとの出会いから一年が経ち、ささやかなお祝いの食事をすることになった。
「今夜は、早く帰る」と、告げてアパートを出た男だったが、チラシ印刷のミスが発生し、その事後処理で遅くなってしまった。 . . . 本文を読む
しばらくの間は、平穏な日々が続いた。
しかし男の給料だけでは生計が立たず、共稼ぎの状態が続いた。
ミドリは休暇が取れるのだが、男はそのことを会社に言い出せないでいた。
籍こそ入れていないが、夫婦生活を営んでいるのだ。 . . . 本文を読む
暗闇に一人居たミドリを見た時に、ひょっとして! とは思った。しかし、ミドリの口からはっきりと告げられた今、男は不味いことになったと思った。確かに、道夫の言うとおり男のエゴから、その便利さから、ズルズルと関係を続けてきた。 . . . 本文を読む
「夕食後の団らんの時だったの」
ミドリは、ポツリポツリと事の顛末を話し始めた。
「母と妹の三人で、貴方のことを話してたの。
毎日お部屋に行って、お掃除をしたり、夕食の支度をしたりしていることを。
ここ二、三日は残業の連続やら、兄が迎えに来たりしてアパートに寄れないから、寂しいって。
冗談まじりの会話だったのに、急に道夫兄さんが怒り出したの。
『お前は、どういうつもりなんだ。
彼と結婚の約束を . . . 本文を読む
辛い毎日だった。
炎天下の下、足を棒にしてスーパー・商店を回った。
一つの契約高が 数万円の仕事を取ることに、何度頭を下げただろうか。
急ぎの納品だと、まだ明けやらぬ早朝にチラシを届けたりもした。
夜になると、疲れ果てて泥のように眠りこけた。
ミドリは、相変わらずやって来た。
しかし、男の帰りが遅いことが多くすれ違いの日々が続いた。
そんなある夜、帰りが午前零時を回ってしまった。
鍵のかかっ . . . 本文を読む
男は、消えてしまいたかった。よりによって、今夜会うとは。
「どうなさったの? お疲れのようね。
ごめんなさいね、父がご迷惑をかけたみたいで。
会社をお辞めになったと聞いて、心配してましたのよ」
あの高慢な麗子の言葉ではなかった。
心底に心配しての言葉として男の胸に入り込んだ。
「わたし、あの後に父の勧めるままに、あの方の後妻に入りましたの。
貴方とのことも、快く『若さというものは、羨ましいもの . . . 本文を読む
幾度かの転職後のことだ。
職業安定所の係員に、「プライドを捨てなければ、駄目だよ」と、窘められるに至った。
「そんなつもりはない!」と、強弁したものの、男自身も感じ始めていたことだ。
これといった資格を持たない男に、不況の風は冷たい。 . . . 本文を読む