食堂へは、二階に上がらなければならないようです。
本来なら部外者のわたしなどは同行することなどはできないのですが、不思議な縁がありまして、ここの施設長がわたしの知り合いだったのです。 . . . 本文を読む
小谷新左衛門の言葉が、小次郎に朱美を思い起こさせた。
昨夜のことだ。
初めて朱美が小次郎のために涙した。
「あのムサシという男、鬼神とのうわさが。
いかな小次郎さまにてもかなわぬと、巷間ではささやかれておりまする」
頬を伝う涙を拭こうともせずに、朱美はひたすら小次郎にすがった。
「ムサシという男、情け容赦のなき者とか。
試合った相手は、ことごとくにこの世を去られていると聞き及びました。
おね . . . 本文を読む
そして、舟島にて。 小倉の地からはさ程に離れていない小島だが、隣接している岩礁は難所として恐れられており、漁師ですら立ち寄らない。
「見世物にしてはならぬ」という藩主の命により、見物人を立ち入らせぬためとして、この島が決められた。 . . . 本文を読む
小倉屋に逗留の間も、毎朝夜明け前から鍛錬に励むムサシだった。
大声を発しながらの素振りで、重さが三貫はあろうかという太い木剣が上段から振り下ろされるたびに「ブォン、ブォン」と空気を切り裂く鈍い音がする。
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