「まあね。武蔵も、浮気ぐせがなくなれば、ほんとに良い夫なんだけど。
でも、武蔵が浮気をやめたら、武蔵じゃなくなる気もするしね。
面白いのよ、武蔵は。浮気したのかどうか、すぐに分かっちゃうの。 . . . 本文を読む
「お客って、どうせ女でしょ? あたしを呼ばずに接待するということは。で、どういう素性の女なの?」
「温泉組合の理事さんです。とっくりやらさかずきやら陶器のとりひきがありまして、その仲立ちのお礼をかねての、」 . . . 本文を読む
「名古屋のコメ兵なら、中古品かもしれないけど安く買えただろうに」という同僚のことばもあとの祭りで、
つい「定価で買うことが大事なんだ。うちだって値引きねびきで苦労しているだろうが。 . . . 本文を読む
「太平洋戦争はね、体力勝負で負けよ」
「いえ、そんなことは。天子さまのおこころづかいで負けることにされましたが、さいごには大和魂で勝ったはずです。
敗戦は、これいじょう民にぎせいをしいたくないからとの、天子さまのおぼしめしですから」 . . . 本文を読む
勝子だけでなく、自責の念にかられつづけていた母親。
遊び感覚でかわした接吻を近所のおとなに見とがめられて、田舎を追いだされたふたりだった。
ひと間の部屋に、生きていくためだけに同居をはじめたはずだった。 . . . 本文を読む