昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)正直のところ辟易する彼だった

2015-11-29 11:44:19 | 小説
「ほらっ、空けろよ。そうか。男の酌より、女性の方がいいか。君代さん、頼むよ」 彼は、君代のお酌で盃を重ねた。 そこはかとない色香を漂わせているのは、和服のせいだけではないように感じた。 どちらかというと姉御肌なのだが、佐知子のように先陣を切るタイプではなかった。 一歩下がって、雰囲気に流されることなく対処することが多かった。 そんな君代に浮いた話の一つも出ないことが、彼には不思議でたまらなかっ . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)口々に歓迎の声が上がった

2015-11-26 09:03:39 | 小説
車のライトの中に、佐知子の姿が浮かび上がった。夫を心配する、新妻そのものだった。 「あいつ、こんな寒空に‥‥」 木は、車のスピードを上げた。佐知子の前で急停車して、 「何で、外に出てくるんだよ。風邪をひいたらどうするんだ!」と、怒鳴りつけた。 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)『世間体が悪い!』って、怒られたよ

2015-11-24 09:08:28 | 小説
「おゝい、迎えにきたよ」 高木の声が、白い息の道筋となり彼を呼び止めた。 「ありがたい、助かるよ」 「ホントにすぐ出たんだな。迎えに行くって、電話で言えば良かったよ」 助手席のドアが開き、暖かい空気と共に酒の匂いが彼を包み込んだ。 「大丈夫かい? 飲んでるんだろ」 「なあに。この位、どうってことないさ」 酒臭さをプンプンと匂わせながら、高笑いをする木だった。 「もっとも、都会じゃ駄目だろ . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)心の汚れすら凍らせてしまう

2015-11-23 10:19:17 | 小説
外に出ると、満天に星が瞬いていた。光り輝くネオンもなく、都会では見られない程の数多の星が見られた。故郷に帰ると、如何に都会が汚れているか良くわかる。星の数だけではなく、空気もまた冷たい。呼吸をする度に、鼻の粘膜にひりつきを感じる。 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)お部屋のおそうじをしてね

2015-11-18 09:10:41 | 小説
うどんだけでは物足りなさを感じた彼は、小夜子の用意した餅を、砂糖のたっぷり入った醤油で三個ほど平らげた。 「うわあ、見るからに甘そう…」 呆れ顔で見る早苗に、 「良いんだよ、好きなんだから」 と、横を向く彼だった。 早苗は、そんな彼を後ろから覗き込むようにして 「お兄ちゃんこそね、太るよ」 と、悪態をついた。 「あゝ、もう 少しは静かに出来ないのか! さっきから、肘が当たったとか汁が飛んできたと . . . 本文を読む

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