昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十八)どうせ、由香里はブスよ

2015-10-31 13:58:47 | 小説
ゆっくりとしたお千代さんの歩に合わせていたため、由香里が戻ってから相当の時間が経っていた。 玄関口は閉められていて、勝手口も鍵がかかっている。 「由香里ちゃあん。開けてよお…寒いよお」 何度か声をかけたが、返事が返ってこない。 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十八)せんせい、なんだって?

2015-10-28 09:18:12 | 小説
暫く泣きじゃくっていた由香里も、お昼近くにかかってきた母親の電話で、やっと落ち着きを取り戻した。 「先生にはお手数をかけますが、くれぐれも由香里をおねがいします。淋しがり屋ですので、やんちゃをいうと思いますけれど。実は‥‥」 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十八)起っきろお!

2015-10-25 10:48:42 | 小説
「起っきろお! 目がくさっちゃうぞ!」 茶目っ気たっぷりの由香里の声で、目が覚めた。 布団の上にまたがりながら、由香里がキスをせがんできた。 「こら、こら。悪ふざけが過ぎるぞ」 軽く由香里の頭を小突いた。 「おはようのキスぐらい‥‥」 口を尖らせる由香里は、あからさまに不満そうだった。 昨日のことで、由香里は恋人気分に浸っている。 “まずかったなあ” 後悔の念が湧き起こる彼だったが、時を戻すわ . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十八)築百年とまでは行かずとも

2015-10-24 17:16:15 | 小説
だだっ広い部屋で一人床に就いた彼だったが、その夜は深々と冷え込んだ。 障子を隔てた縁側から、隙間風が入ってくる。 月明かりが漏れてくる所を見ると、雨戸の立て付けが悪いのだろう。 築百年とまでは行かずとも、相当の古い家屋であることは間違いがない。 父親は「男同士で一つ部屋に」と言ったのだが、母親が頑として譲らなかった。 「先生が眠れませんよ、それでは。気疲れされますわ、きっと。それに‥‥」 口を濁 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十七)もう少し召し上がらない?

2015-10-22 09:03:12 | 小説
「ねえ、先生。もう少し召し上がらない? それとも、こんなおばさんではだめかしら」 妖艶な目付きで、彼を見つめてきた。 思わず目を逸らしながら、黙ってビールをコップに受けた。 「ねえ、先生。由香里のこと、どう思います?  いえいえ。生徒としてではなく、女姓としてです。 あの子を見てると、いじらしくて。 本当に先生のことが好きなんですよ。 もう涙ぐましいほど、先生に認めてもらいたくてがんばっていま . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十七)ほんのり桜色に

2015-10-21 09:12:00 | 小説
「さあさあ、お父さん。もうその位にされたら、どうですか。 今夜は、飲みすぎですよ。先生もお疲れなんですから、もうお休みになられたらどうです?」 母親の助け舟が入り、やっと父親から解放された。 彼も勧められるままに飲んだビールが、相当に回ってきていた。 睡魔に襲われて、幾度となく欠伸を噛み殺していた。 「そうだな。もう寝るかな」 ふらつきながら、父親は別室に移った。 由香里の寝顔を覗き込んだ父 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十七)実の所は、体力です。

2015-10-20 08:58:41 | 小説
「上下関係に厳しいから? 礼儀正しいから? まあそれも、有りますがね。 実の所は、体力です。 良く言うでしょうが。『健全な肉体に、健全な精神が宿る』と。 そうなんです。これは、真理です。 体力がないと、粘りが生まれません。 ビジネス社会は過酷です。結果を求められます。 プロセスよりも、結果なんです。 頑張りました、でもだめでした。これは、通らない。 分かりますか、御手洗君。自慢じゃないが、わたしは . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十七)愈々、正念場だ

2015-10-19 09:01:01 | 小説
「先生、いや御手洗くん。 わたしはね、由香里の家庭教師と言うことではなく、一人の男としてね、貴方を買っています。 実に、好青年だ。しかしね、好青年過ぎるんだなあ。 立場上ね、自分をセーブしているのは分かります。家庭教師としては、それで良い。 しかしねえ、若い男としては物足りないんです。 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十七)はあーい、先生おやすみい

2015-10-18 10:04:40 | 小説
「ふうぅ、あつい‥‥」 「お先でした。あゝ、良いお湯でした。でも、湯冷めしそうねえ。もう一度入り直しますわ、後で」 母親の後ろから、パジャマ姿に着替えた由香里が出て来た。パジャマを通して、湯気が出ている。肌が少し赤くなっているところを見ると、相当に熱い湯だったのだろう。母親もまた、上気した顔をしている。 . . . 本文を読む

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