まだまだ粗悪品が混じり込んでしまうことがある今、メーカー側の恣意的な混入を恐れる武蔵だ。何としても、それは阻止しなくてはならぬ。価格決定権死を守したいメーカーサイドにとって、富士商会のように力のついてきた卸問屋は、ある意味脅威になっいくる。 . . . 本文を読む
うんうん、と頷きあう増岡を始めとする配達人たち、口々に竹田を褒めそやした。
「そうだよ、出掛けには『気を付けて』だし、帰ると『ごくろうさん』だし」
「それに、差し入れもしてくれるじゃないか」
「火鉢も用意してくれたし」
. . . 本文を読む
ひとしきり笑いを取った後、顔をぐっと引き締めて言う。
「冗談はこのくらいにしてだ。会社の花形は、営業だ。こいつらが注文を取ってこないと、会社は成り立たん。しかしだ、仕入れも大切なんだ。 . . . 本文を読む
それ以来、積極的に動き回る小夜子だった。武蔵のエスコートよろしく、仕入れ関係の取り引き先を中心に丹念に訪れた。初めの内こそ気恥ずかしさに俯きかげんな小夜子だったが、三社目辺りになると堂々としたものだった。 . . . 本文を読む
月も半ばになって、荷の動きも落ち着いてきたことから
「どうだ、みんな。今夜、ご馳走をしてやりたいんだがな」と、武蔵から声がかかった。
「皆のおかげで、新規の客がどっと増えた。然も、老舗の店ばかりだ。
『成り上がりが!』とケチをつけてた所ばかりだ。
これで富士商会の株も上がるってもんだ。なあ、みんな」
. . . 本文を読む
町内の旦那衆が、物見遊三でやってくる。
商売に関わることでもないのだが、無碍な対応をするわけにもいかない。
「ほお、あんたかい? 暴漢をやっつけたというのは」
「大立ち回りだったそうだね。投げ飛ばしたんだとか?」
「男たちは、ビビって奥に引っ込んだそうじゃないか!」
「まったく、嘆かわしいことだよ。英霊さんたちに、恥ずかしいこった」 . . . 本文を読む