アパートに立ち戻った彼は、どっと疲れを感じた。緊張の糸が切れ、虚脱感に襲われていた。
「コン、コン」
突然、ドアをノックする音が聞こえた。思わず時計を見ると、十時近かった。
〝誰だ、今頃〟
訝しく思いつつも、「ハイ、どなたですか?」と、その場から声を上げた。 . . . 本文を読む
出雲駅に着いたのは、二時半頃でした。
で、早速に、昨日のICHIBAに行きました。
昨日の内に大体の所は決めていましたが、やっぱりいざ買うとなると、迷いますね。
何にしたかですって? よくぞ、聞いてくれました。
ぜんざい、ぜんざいを食べなかったことがですね、ずっと引っかかっているわけですよ。 . . . 本文を読む
いつの間にかまどろんだ彼が目覚ると、もう辺りは真っ暗になっていた。
「しまった! 今日は、バイトの日だった。うわあ、もう八時じゃないか」
慌てて飛び起きると、タバコ屋前の公衆電話に飛びついた。
何と言い訳したら良いんだ、と考えあぐねたが、呼び出し音が鳴りやむことはなかった。
首をかしげつつも、とに角バスに飛び乗った。
先日、成績がアップしたからと、月々のバイト料とは別に謝礼を出してくれた先だっ . . . 本文を読む
ボクちゃん、元気にしていますか?
まだ一週間だというのに、一ヶ月以上逢っていないような気がします。
淋しいです。きっと、ボクちゃんのことだから浮気したでしょうね。
それとも、我慢してくれてるかな?
痴呆の介護は大変です。母がダウンするのも無理からぬことです。
もっと早くに、短期間であっても帰省すべきだったと、反省しています。
ボクちゃんには悪いけれど、もう少し実家に留まるつもりです。
一ヶ月位に . . . 本文を読む
言うが早いか、ラジカセのスイッチを入れた。
南米独特の軽快なリズムに乗せて、哀愁を感じさせるメロディーが流れ始めた。
フロアの中央に立つと、妖艶さを漂わせながら身体を動かした。
ヒップを左右に激しく揺らしながら軽快に回転する様は、彼の背筋に悪寒を催させるものだった。 . . . 本文を読む
間が早いので、日御碕(ひのみさき)まで足を伸ばすことにしました。バス時刻を調べるのですが、どうにもうまくありません。
ありがたいことに案内人のおじさんがみえます。
今は若いお嬢さんのお相手をしてみえます。
「へへへ、鼻の下が伸びてません?」
とはね、言いませんでしたよ。
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今さら縁結びを求める気はさらさらありませんが、来世では是非とも運命の女と結ばれるべく、お願いの参詣です。というのは建前でして、いつまでひとり旅が続けられるか分かりませんが、旅先でのアバンチュールを求めて…。というのも、実は建前でして。本音は、まあいいじゃないですか。--- . . . 本文を読む