いよいよ、です。
明日、東北の中尊寺に向かって出発です。
旅程は、4泊5日の時間贅沢旅行です。
新幹線ならば、シュタッ! といったところでしょうが、愛車の二台目ローンレンジャー号(ミラジーノ・クラシック)での、こちこ寄り道旅ですから。 . . . 本文を読む
その夜の食事は、今の男が望むべくもないものだった。
この家族に囲まれて育ったミドリだからこその、異性に対して無防備だと思えた。
皆が皆、いい人だった。
人を疑うことを知らない母親。
他人に対して寛容な兄。
開けっぴろげで快活な妹。
そんな四人家族との夕食は、とに角楽しかった。
ミドリだけが 顔を上気させたまま、口数が少なかった。
男の顔をまともに見られなかった。
男にしても多少の罪悪感もあり、 . . . 本文を読む
ナイトクラブでのダンスとは、また違ったものだった。夢見心地のフワフワとした、あの心地よさを求めたミドリだったが、今のこの部屋でのダンスは、また異質のものだ。ともすれば、脱力感に襲われ崩れ落ちそうになる。心が異次元世界に旅立つような錯覚を覚える。 . . . 本文を読む
翌日の昼過ぎ、ミドリがやって来た。
兄にせかされまして、としきりに弁明した。
約束の時間は夕方の筈で、男はまだパジャマ姿だった。
飲みかけのコーヒーもそこそこに 、ミドリを外に待たせると慌てて着替えた。 . . . 本文を読む
週末、昼少し前にミドリから電話が入った。男から電話をかけることがためらわれていたので、そのことを先ず謝った。
「ごめん、ごめん。気にはなっていたけれど、男からの電話は迷惑だろうと思って、できなかたよ。この間の夜は、悪かったね、送っても行かずに。大丈夫だった? 相当、叱られたんだろう」 . . . 本文を読む
不思議に痛みを感じなかった。
男が手加減をしたわけでもない。
何も考えられないのだ。
己の身に起きたことではない、と思っていた。
もう一人の麗子が頬を打たれて、それを冷ややかに見つめる麗子がいた。
ふらふらと夢遊病者のように、麗子が立ち上がった。
「帰らなきゃ」
麗子の前には、バツの悪そうな表情の男がいる。
頬を手にした右手をじっと見つめる男がいる。
男は、黙って麗子を送り出した。
やり過ぎたか . . . 本文を読む
同僚の、二十代後半の青年は、「そりゃもう、吹き替えですよ。だつて、集中できないじゃないですか」と答えました。
同僚の、○○代のおばさんは、「吹き替えよ、当然に。だって、目が疲れるじゃないの。あっちみたりこっちみたりして」でした。 . . . 本文を読む
男の平手が飛んだ。麗子は、信じられない、といった表情で男を見つめた。会社内で男の噂を聞き、その真偽を確かめるべく来たのだ。
「そろそろ、彼、戻れるかもよ。取引先からの引きもあるようだし。 . . . 本文を読む
放心状態の麗子だった。
どうして、どうして‥‥という言葉だけが、渦巻いている。
男にしてみれば、理解のできない麗子の行動だった。
麗子に対する未練はある。
愛情が全く消えた訳でもない。
しかしミドリの顔が浮かんだ時、男の気持ちの中で何かが弾けた。
ミドリにすまないという気持ちが湧いた。
ミドリとの一線を越えたわけでもなく、約束を 交わしたわけでもない。
男としてのけじめ、としか言いようがな . . . 本文を読む
「知ってるのよ、私。ナイトクラブに行ったでしょう」
麗子は、勝ち誇ったように言う。男は、無言のまま背広を脱いだ。そしてタバコを一本取り出し、火を付けた。突然、麗子は男からタバコを奪い取ると、男にしがみついた。 . . . 本文を読む