「女将、女将、女将。聞いてるか?
この佐伯正三くんはな、驚くなかれ、恐れ多くもだ、逓信省の次官さまになられるお方なんだよ。
我々とは、まるで違うお方なんだ」
「そうですよ、そうです。年次としては、我々の後輩ではありますよ。年下です。
突然にこの極秘プロジェクトに参入した、新人ですよ。
でもね、佐伯局長さまの甥っ子さまであらせられる。
控えおろう! ってな、もんですよ」
ネクタイをねじり鉢巻にし . . . 本文を読む
“この報告書を書き上げれば、小夜子さんに逢えるんだ”。
正三は、隣町に出かけて観た映画のあとに、暗くなった公園での「約束よ」という声と共に触れられた、小夜子の柔らかい唇の感触が忘れられなかった。 . . . 本文を読む