翌朝、台所から小夜子の明るく弾んだ声が聞こえてきた。ベッドの中でまどろむ武蔵の耳に、心地よい。
「いやあねえ、三河屋さんったら。何もないわよ、なにも。 . . . 本文を読む
「ねえねえ、この間買い物をしてたらさ。ふふふ……奥さんって、言われちゃった。参っちゃうわ、ほんと。『お嬢さん、何にします? ああ、ごめんよ。みたらいさん家の、奥さんだったねえ。 . . . 本文を読む
「分かった、分かったよ。これから女性の社会進出は、当たり前のことになるさ。その先進グループに入りたいんだな、小夜子は。しかし一人暮らしは、なあ。どうだろうなあ。そうか思い出したぞ。『愛人になれ!』と、口説いたんだ。だけど小夜子は、即座に『イヤッ!』と言ったんだ」 . . . 本文を読む
鮨店の座敷に上がりこんだ武蔵は、小夜子の酌での酒を楽しんだ。
「いゃあ、小夜子の酌で飲む酒は格別だ。同じ酒でも、まるで味が違う」
「ホント? 美味しい? あたしも、少し飲んでみようかな?」 . . . 本文を読む
叔父夫婦には十歳と八歳になる二人の姉妹がいた。
その後は一度も懐妊できずに、来年には三十路も半ばとなる。
焦る叔父に対して「まだ若いんだ。焦らずに男子が産まれるのを待ったらどうだ」。 . . . 本文を読む