FPと文学・エッセイ 〜是れ日々なり〜

ライフプラン、資産設計のほか、文学・社会・芸術・文化など気まぐれに日々、FPがつづるエッセイ。

深大寺の山門前で ~ 竜虎と饅頭と美女と  

2010-01-23 19:54:44 | 仏像・仏教、寺・神社

 深大寺 「竜虎相打つ」

深大寺には、よく行きます。
ここ2~3年は、初詣のお寺になっています。春は、隣の神代植物園に行ったりして、暖かな中、植物を愛でます。前には、深大寺山門近くの日帰り温泉に浸かって来ました。

写真は、山門近くにある「竜虎相打つ」の像(こういうタイトルだったか定かではありません)。実物でないと、ちょっと見にくいかもしれませんが、高さ2~3メートルほどの石像です。左にSの字に天から地へと這うように降りて来て首をもたげているのが竜、身を反転し今にも襲い掛かろうと牙を剥いているのが虎。中央あたり、虎の背中から尻尾にかけてちょうど良く、すわりのいい凹みがあり、そこに1円玉やら5円玉、10円玉やらの「お賽銭」が置かれています。

竜虎の像は、昔から絵師に多く描かれています。狩野山楽や、橋本雅邦の屏風画が有名です。‘陸の王’虎と、‘天翔ける空の支配者’竜。相打つこの両雄の対決はどちらが強いのか―。といっても、竜は架空の生き物、実際に対決はできないのですが、屏風画などを見ると、なんとなく竜のほうに余裕がありそうな気がします。この石像では、「相打つ」(相打ち)、つまり引き分けのように思えます。

見方を変えると、竜と虎は、決して両雄が闘う身ではないようです。竜も虎も、古代中国では麒麟や鳳凰と同じように四方を護る神、仏教でいえば四天王です。つまり、竜と虎は、互いに闘うために睨み合っているのではなく、この世の四方を鬼神から護るために睨みを利かせているのではないか。仏像の四天王の顔は、どれも怒った形相をしています。同じように悪を威嚇しているからです。

たまたま、陸の王と天の支配者を1枚に納めるべく、闘うよう互いに睨み合わせていますが、この世を護る象徴として強い覇者、竜と虎を配置した構図なのだと考えると、まったく違く見え、安心してありがたい気持ちになるから不思議です。

ただ、やはり、強いもの同士がまさに闘おうとしていると見る方が迫力が出て、わくわくと想像力を掻きたてられるものです。天才絵師たちの筆も、この両雄の闘う図に強くそそられてきたのでしょう。・・・そう思いながら、虎の背の「お賽銭受け」に今年も小銭を置いて来ました。

深大寺に来る楽しみはもう一つあり、わずか100メートルちょっとの門前の露店通り。子ども時分の三島大社の露店が懐かしく、深大寺の門前通りでは、必ず焼きたてアツアツの草饅頭を食べ、オコシの菓子を土産に買って帰ります。さらに、今年から楽しみができたのは、フランス風クレープを売る外人美女が露店に入っているのです。

旅番組で紹介されたおかげか、この正月は、フランスから嫁いできた美女の前は人だかりでてんてこ舞い、さすがの美しい顔もあまりの客の注文で引きつっていて、ちょっと気の毒になってしまいました。





仕組み預金 ~ 知らないうちのデリバティヴ  

2010-01-09 16:48:22 | シニア&ライフプラン・資産設計

銀行の定期預金の金利が0.1%(年率)という中で、それを大きく上回る金利の預金が広告に載っていたりします。

デリバティヴの一種を組み込んだ仕組み預金である場合があります。デリバティヴというのは、一般の預金者には、仕組まれているかどうかも分かりにくいうえ、その仕組み自体もよくわからないようです。

仕組み預金の中に、二重通貨預金というものがあります。これはデリバティヴの通貨オプションを組み込んだもので、円で預け入れて、利息が円で支払われます。ところが、満期時に、元本そのものは円で戻るか外貨で戻るか、預金者自身で決められません。為替変動により銀行が決めるのです。

この金融商品は、通常の預金に比べ、金利が高いという最大のメリットがあります。「預金の最大メリットは高金利」という人なら、これだけで何も言うことがありません。しかし、この商品のもつデメリットに比べると、そのメリットがいささか危うくなってきます。

まず、為替の変動によって、元本が円で戻ってくるか外貨で戻ってくるか自分で決められないこと。これは預金者にとっては大きなデメリットです。プット・オプションというものを、預金をした時点で銀行によって仕組まれているからです。

「売る権利を売る」という、なんだかよくわからない仕組みで、これは、円高になればなるほど、預け入れている外貨の損失が拡大していくオプションです。損失が拡大していくから、そのまま満期になると銀行は外貨のままで預金者に元本を戻します。

「あちち」と言って、焦げすぎた預金者の栗を拾い出して放り投げ、「あとは自分で好きなようにして食べてください」と言われるようなものです。預金者は「焦げすぎて食えない栗」(外貨)を「焦げすぎた」状態(円高)で円に換えざるをえないのですから当然、為替差損が生じます(これだけで金利分が吹っ飛んでしまうでしょう)。

逆に、円安になった時は、通常の外貨預金であれば為替差益を得られるのですが、この為替差益については銀行が受け取るようになっています。銀行は円安のときに預金者に円で元本を戻しますが、戻された預金者は為替差益の恩恵は受けられません。そういうオプション取引を知らずに組まされているからで、そういう仕組みであることすら知らずにこの商品を「買う」ことになるのです。

これが詐欺だとは言いませんし、一概にオプションが悪いというのではありません。あらかじめ理解していれば、経済や為替状況によっては、この商品が強みを持つことがあります。いちばんの問題は、個人投資家がよくわからずに、あるいはよく説明してもらえずに、商品を買ってしまうことです。だから「詐欺にあった」ように思えてしまうのです。

家電など眼に見える商品なら、納得いくまで聞いて買うのに、金融商品は眼に見えないばかりに(綺麗なパンフレットで苦心して見えるようにしてますが)、目先のメリットだけで買ってしまいがちです。