蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 3

2019年01月13日 | 小説
(2019年1月13日)
神話M425とM426を前回紹介しました。太陽と月の成り立ち、太陽の失敗、月と人(女)との関わりなど謳われています。レヴィストロースの解説がこれに続きます。太陽と月の分離が不完全なので、世界は暗闇に閉ざされるか光横溢かが、永く継続したり不規則に交代していた。人が天に昇り月になって絶対夜を創造した=この神話の一群と「太陽と月の妻」神話との類似を指摘する。またプレーンズ(北米の大平原)の各部族の総出の祭り「太陽のダンス」との連関も指摘する。

北米の太陽ダンスが南米インディアンの断食祭り(Sherenteシュランテ族)とつながりも述べる。「Sherente族の伝承する神話は生と料理」(神話学第一巻)で頻繁に引用されている。その居住域を同書で読むと南緯10度西経50度の周囲、現代の地図で参照するとそのあたりは「エストロンド山地」とある。Arapaho族の居住区をネブラスカ州とすると北緯40度(+)、緯度にして50度の隔たりとは約6000キロメートル距離、これに経度の差(Arapahoは西経100度近辺)を加えると両者を隔てる距離は8000キロほどだろう。途中には海あり山あり、蛮族が棲む。
これほど離れているにもかかわらず、レヴィストロースはさらりと、南北神話の共通性を述べる。

関連性を以下に指摘する。
<<Nous avons montre dans le Cru et le Cuit que le rituel shrente du grand jeune, et les mythes bororo du denisheur d’oiseax (M1) reproduisent le meme sheme>>(175頁、なおjeuneにアクサン^をuに被せられないけれど断食、若者ではない)
訳:断食祭りだけではないbororo族の「鳥の巣あらし」(神話M1,神話学のすべての神話の標準)神話も(太陽ダンスと)同様のスキームをもつと「生と料理」で論じた(同書279)。
それらは;
まず1 高みに昇る(太陽ダンスは棒の先端、鳥の巣あらしは巨木の頂) 2 昇った本人はしばし捕囚として孤立する(降りる願いは許されない、ジャガーの妻に仕置きされる) 3 地上に戻るきっかけが「文化の取得」(太陽から火を盗む、ジャガーから火と猟具を受ける)

次に神話同士の関連が続く、天に昇るきっかけとして、
まず1祭りに着用する服飾につながる。インコの尾羽とヤマアラシのトゲ毛は大斎(断食)太陽ダンスにて主宰者、あるいは高位カースト男の服飾に用いられる。その者の社会地位を誇示する道具であるから、その者の「存在理由」である 2娘はヤマアラシに誘われ(ためらいなど見せずに)天に昇った、bororoの息子は父の指図に逆らって(幼鳥の代わりに)石飛礫を投げつけた(=この行為の差異はレヴィストロースが解く筋道(sequence)での逆転、inversementです)

そして北米神話の基準となる
M428 星(太陽と月)の妻(第5)Arapaho族 (176~179頁)が紹介される。
前引用の2神話と筋道は似通います。一方で登場人物は増えているのと各sequenceの肉付けは豊かです。

写真:ネットで北米ヤマアラシを見つけた。トゲ毛を得ようとした娘は月に拐かされた。

太陽と月による地上の女評定の前段に二人の兄弟、父母とのテント生活。兄弟は狩りに(規則正しくないままあちこち)出ている。ある夜、二人揃って「そろそろ独立したな、妻をもらおう」このあと女評定がでて、太陽がカエル、月は人の娘を選ぶ手順は同じ。月が地上に降りる。川を西に沿い進む(ネブラスカ州ならミズーリ支流のニオブララ西から東に流れる)上流に向かった。見つけた村とは;
<<L’air etait embaume, la vue magnifique. Les oisaeux chantaient ansi que les reptiles et le insectes.(177頁) 村にながれるそよ風の芳しさ、広がる景色の美しさ。思わず月は見とれた。鳥は歌い、カエルもコオロギも唱和した。(reptilesとはトカゲ蛇のたぐいだが、歌う蛇など思いつかないからカエル(これはamphibiens両生類ながら)とした。insectesは昆虫、コオロギしか思いつかなかった。
<<Lune admirait cette scene idyllique quand il vit deux jeunes fille qui suivaient la berge en rammassant du bois mort. Vite change en porc-epic , il se fit remarquer de l’une d’elles.(同)
訳;月は娘を目にとめた。二人は枯れ枝集めに川縁を歩いていた。あまりも美しく牧歌的景色、月は息をのんで見つめた。すぐにヤマアラシに変身した。二人の一人、とびきり別嬪にに心を惹かれたのだ。

レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 3の了
(次回投稿予定は15日)


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