鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

梅花透風景図鐔 鎌倉 Kamakura Tsuba

2010-11-06 | 
梅花透風景図鐔 鎌倉


梅花透風景図鐔 無銘 鎌倉

 鎌倉と汎称されている鐔も系譜の不明な作である。鋤下彫の手法が鎌倉彫に似ているところからの呼称で、鎌倉時代とも相模国鎌倉の地とも無関係。製作された時代も明確ではなく、おおよそ桃山頃とみられている。文様も鎌倉彫とは異なることから、何か別の的確な呼称を付けていただきたいものである。
 さて、この種の鐔は、鐔の文様表現の歴史を俯瞰する上で欠くことのできない存在である。散らし絵の構成を基本としている。山水風景図も下敷きとしている。画題の素材は松や梅などの植物、花、鳥、山や波、雲、建物などの風景の断片で、まさに文様化された風景。これらを無関係に配しているのだが、その文様化された風合いは古典的な山水画や水墨画とは異なり、創造性が強く窺いとれるのである。琳派の風合いとは直接結びつけられないが、計算された上での微妙な曲線を構成の要とした鎌倉鐔の心象風景の存在が、琳派の美観の創造へと繋がっていると推測している。

山水図鐔 平安城象嵌 Heianjo Tsuba

2010-11-06 | 
山水図鐔 平安城象嵌


山水図鐔 平安城象嵌

 平安城象嵌の特徴が良く示された鉄地真鍮象嵌が美しい作。このように、平面的な表現だけでなく線描写と高彫象嵌を組み合わせるのが平安城象嵌の室町末期から桃山頃の特徴で、図柄も散らし絵の要素を採り入れた琳派風構成。耳を装っているのは、鐔面を絵画の画面として意識した結果であろう。
 地鉄の表面は槌目地を活かして雲のような肌合いとし、これを背景に上部には帰雁を、下には波上を飛翔する千鳥であろうか、橋を添景として風景画の構成を明確にしている。ところが松樹と藤花を採り入れた意図はどこにあるのか。散らし絵であればこれも頷けよう。鐔の場合、上下左右を四分割して違った文様を施すことがある。