鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

親子鶏図目貫 遅塚久則 Hisanori Menuki

2015-01-14 | 鍔の歴史
親子鶏図目貫 遅塚久則



親子鶏図目貫 遅塚久則

 象嵌に鏨の打ち込みを加えて表情に多彩な変化を与えた金工が久則。もう一つ、久則には他の金工にはない大きな特徴がある。過去にも紹介したことがあるのだが、目貫のような裏面が絵として採られることのない作であっても、その一部を描き表わしている点。親子鶏図目貫の裏面写真がその例である。普通、柄に巻き込まれると、この裏の顔は見え難いはず。だが、確かに、ちらっとでも柄糸の隙間から鶏の横顔などが見えれば驚きである。
 さて、ここではこのような丸彫りではなく、象嵌の表面に加えられている様々な鏨をご覧いただきたい。体毛はもちろんだが、次の縁頭の、猿の顔などは巧みな彫刻に、微細な点刻を施している。着物の柄の一部は鑚の打ち込みによるもの。鶏の羽の表面、鶏冠、胸毛、足先すべてが見どころ。これらは象嵌や平象嵌の上に加えられ、色絵も組み合わされている。