鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

名所絵図鐔 石山基董 Mototada Tsuba

2015-01-22 | 鍔の歴史
名所絵図鐔 石山基董


名所絵図鐔 石山基董作

 基董は、政守と同じ京都の金工。活躍した時代もほぼ同時期と推考される。というのは、政守については生没年が良く判っていない。ただし、元禄四年の年紀作がある。基董は寛文九年の生まれであるから、元禄四年は二十三歳。基董が若いころから修業を積んでいたとしても、政守の方が少し年長と考えて良いだろう。平象嵌に毛彫を組み合わせて京都近郊と思しき風景を描いていることから、政守の影響を受けていると考えられる。
 平象嵌と毛彫を組み合わせた表現方法は、この後に登場する一宮長常が得意とした。長常の場合は人物に視点を置き、動きのある作品を遺していることから人気が高く、評価も高いのだが、手法の面白さとしては、洛中洛外図屏風などの障壁画を見るような政守に軍配が上がる。
 さて、基董のこの鐔は、政守の四分一地に対して赤銅地を活用している。夜を想定していると考えて良いだろう、月が川面に反射しているところを採り入れるなどは、創造意欲が旺盛。各所の風景の要素を散し絵のように点在させている点も屏風絵に似ている。