鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

舞鶴図鍔 大森 Omori Tsuba

2010-12-03 | 
舞鶴図鐔 大森派


舞鶴図鐔 無銘大森派

 雲の上を飛翔する鶴。この鐔は、写実的な高彫になる鶴は常に見られる描法だが、下に湧き上がるような雲は金の平象嵌になる線描、朝日に滲む雲は金の真砂象嵌の手法。線描写といえば毛彫や片切彫が一般的だが、華やかな平象嵌を簡潔に用いている。平象嵌は、この手法を特異とした加賀金工とは趣を異にしている。江戸時代後期の江戸金工は様々に描法を創案し、独創的な作風を求めた。奇抜にして鮮やかな一例である。

舞鶴図鍔 柳川直光 Naomitsu Tsuba

2010-12-02 | 
舞鶴図鐔 柳川直光


舞鶴図鐔 銘 柳川直光(花押)

 舞鶴図は頗る多い。我が国の風土に良く合った題材であり、かつては現代では考えられないほど多く見られた鳥であったという自然環境の違いもあろう。川の流れを簡潔な線で表わし、水草を添景とし、飛翔する鶴を鮮やかに描いている。美しい構成の鐔である。

舞鶴図鍔 光興・秀興 Mitsuoki・Hideoki

2010-12-01 | 
舞鶴図鐔 光興・秀興


舞鶴図鐔 銘 鶴 川宝斎(花押)鐫之 光興

 江戸後期の京都金工を代表する大月光興(みつおき)とその弟子川原林秀興(ひでおき)の合作。流れる雲間を飛翔する鶴。表裏に描き分けてはいるが、互いに呼び合うような構成。鶴の姿は写実的で、色金も銀と赤銅、要所に金と素銅を加えて的確な色使いになる描写。流れる雲を朧銀地の背景に片切彫で描いている。この線描になる雲の存在こそ、ぼかしという描法が出来ない金工独自のもの。