〈私〉はどこにいるか?

私たちは宇宙にいる――それこそがほんとうの「リアル」のはずである。この世界には意味も秩序も希望もあるのだ。

書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著) 6

2017-08-23 | 書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著)
 本書のキー・コンセプトは、こうして特に農村において成立した「プロト工業化」にある。市場経済の全国的浸透に伴うプロト工業による生産は、江戸時代後期までに各地で額面上で農業生産に比肩し、さらに凌駕するまでになっていただろうと本書は推測している。例えば、藩の調査に基づく研究で産業各分野の生産価額が確認できる、天保期(十九世紀中頃)の長州藩の状況は次のようであった。  これらのデータからは「藩民総生 . . . 本文を読む

書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著) 5

2017-08-23 | 書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著)
 さて、江戸時代前半の人口急増期に、江戸を始めとする都市も急成長を遂げ、全国の都市人口比率は十八世紀半ばまでに平均一三~一四パーセントに達し、その後都市人口も停滞したと本書では推計されている。都市では大規模な用水が順次整備され、ゴミ投棄の取締やゴミ処分も政策的に進められるなど、都市環境の改善が図られ、この結果江戸時代の都市は同時代としては世界的にも清潔な環境な環境が維持されたという。そこには、と . . . 本文を読む