〈私〉はどこにいるか?

私たちは宇宙にいる――それこそがほんとうの「リアル」のはずである。この世界には意味も秩序も希望もあるのだ。

書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著) 9

2017-08-30 | 書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著)
生活としての徳川文明  江戸時代中期以降に一般化した小家族による農業経営は、農民自らの責任のもと、狭小な耕地で不断の労働と改良により生産性向上を実現する「勤勉革命」をもたらし、このことはプロト工業化による非農業的生産の進展と結びつき、農民が富を獲得するチャンスを広げた。こうした状況のもと、庶民の生活の質が着実に改善されたことは、平均寿命の延伸や幼児死亡率の顕著な低下等のデータに示されている。本 . . . 本文を読む

書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著) 8

2017-08-30 | 書評『文明としての江戸システム』(鬼頭宏著)
 さて、以上のような歴史研究の到達を踏まえ、著者は「庶民は富を、武士は権力を、朝廷は権威を、それぞれ分担して受け持ったのが江戸時代の社会であった」と端的に結論している。これまで「江戸時代の庶民は常に食うや食わずの貧窮状態に置かれていた」とされてきたのとは、文字通り正反対の評価である。そして、そのような「貧農史観=江戸時代暗黒史観」の文脈に沿って、飢えたる民衆の蜂起行動として長らく語られてきた象徴 . . . 本文を読む