愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

十六日祭は沖縄の「基層信仰」なのか?

2011年03月11日 | 年中行事
沖縄の十六日祭の地域性•歴史性を端的に述べているのが、酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』(第一書房、1987年)です。ごく一部ですが、引用します。

「八重山地方でも十六日の墓祭りは盛んであった。これは石垣島附近がとくに濃厚で、宮城文女史によれば、新旧の死者の有無に関わりなく墓参して、一日中にぎやかなときを過ごすという(『八重山民俗誌』526頁)。白保(石垣島)ではこの日をウヤビトの正月などといって、前日から墓掃除をして、当日は供物、打紙などを持参して墓に行くが、ここでは沖縄と逆に、十六日以降の一年間に死亡した人の家では墓には行かない。その日に墓に行くと魂をとられるという『白保』二三三頁)。これは竹富島なども同じようであるが、さらに離島に行くと十六日の墓の行事は希薄か、ほとんどみられない。」
「咸豊(かんぼう)七年(一八五七)に整理された「宮古島規模帳」によれば、「毎年正月十六日又は清明参之時 先祖の墓所江は菓子〆物相備致 焼香候御定跡々被仰渡置候処 惣而華美ニ相成云々」(『南島村内法』三四八頁)。という記事がみえる。(中略)これもまた琉球社会の基層文化の中から生まれたものではなく、権力者側の受け入れた異質の信仰を、祖先祭祀の普及の名のもとに常民社会へ強制していったらしいということがここで推測される。」