愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

ICOM(国際博物館会議)

2011年03月27日 | 災害の歴史・伝承
ICOMという博物館の国際組織があります。先月発生したニュージーランドでの地震でも発生10日後には文書で資料保全やスタッフの安否等の声明を出していましたが、今回の東日本での地震に関しても情報が掲載されています。

http://icom.museum/

そもそもICOM(International Council of Museums・国際博物館会議・本部フランス・パリ)とは、世界中の博物館や博物館学芸員等スタッフの国際非政府組織で、国際的なレベルでの博物館活動の協力や相互援助を行っている組織です。171の国と地域に15,000人以上の会員をもち、日本ではICOM(国際博物館協会)日本委員会があり、財団法人日本博物館協会が事務局を引き受けています。

そのICOM日本委員会のホームページがこちらです。
http://www.museum.or.jp/icom-japan/hp/index.html

ICOM日本委員会では、ホームページ上では特に地震に関して更新はされていませんが、本部のホームページには、今回の東日本の地震に関する声明が掲載されています。また、ICOMオーストラリア委員会のホームページを見ると、3月18日付けで、ICOM日本委員会から状況報告の書面が送られています。

http://icom.museum/news/news/article/icom-encourages-japans-efforts-in-protecting-its-cultural-heritage/L/0.html

ICOMの声明です。簡単に意訳します。正確ではなく表現が間違っているかもしれませんが、ご容赦ください。


ICOMは日本の文化遺産保護の努力を激励します。

3月11日に日本の東北地方を襲った壊滅的地震をうけて、ICOMは亡くなった方々と日本の文化遺産に関する深い心配のために遺憾の意を表します。損害の程度はまだ確認されていませんが、文化財と博物館を含む多くの地域が、広範囲に及ぶ破壊を受けてしまいました。さらに、その地域にある原子力発電所が被害を受け、多大なる脅威を引き起こし続けています。ICOMは、県・市町村が非常に貴重な国の文化遺産を保護し、保護する際には県・市町村の努力ができるよう激励します。日本の文化財の多大なる被害・損失は、ひいては人類の集合記憶を貧困にしてしまうでしょう。国の博物館専門家によって、被災した文化財に関する最新情報と博物館スタッフの安否情報を集めて記録されていますが、ICOM日本委員会から我々の仲間には、その重要な取り組みが知らされています。しかしながら、ある一定のサイトへのアクセスは、インフラ被害のため妨げられました。ICOMは資源を結集することによって世界の中でも非常に貴重な文化遺産を保存して保護する責務を継続します。
ICOM日本委員会と保護委員会の災害救援対策本部


そして、ICOM Australiaのホームページでは、ICOM日本委員会からの書面もPDFで掲載されています。常磐大学の水嶋英治先生が執筆したものです。

http://icom.org.au/site/news.php

http://icom.org.au/userfiles/file/News/Japan%20earthquake%20and%20tsunami-1_0.pdf

今回の東日本の地震被害は、世界中の博物館関係者も気に留めているはずです。ICOMも詳しい被災状況の発信や、海外からの具体的支援の調整については、いまだできる状況にないこともあり、また、特に歴史系博物館はもともと海外との交流が少なく、海外への情報発信をどちらかというと不得手としているため、海外からの支援が可能だとしても被災情報が正確に伝わりにくいのではないでしょうか。

阪神大震災後の美術館の復興や資料修復には、ロサンゼルスのジャン・ポール・ゲティ美術館の協力があったと聞いています。ただちに海外からの技術支援は難しいでしょうが、今回の地震・津波は被災規模が大きいだけに、いづれ可能となる海外からの支援の下準備として、被災状況の情報発信も徐々にしていく必要のかもしれません。