昨日「民俗資料館の情報が少ない」を掲載しましたが、ここでは、なぜ民具(民俗資料)を保存するべきなのか、簡単に綴ってみました。
民具(民俗資料)は地域の記憶を呼び起こす文化遺産です。
民俗文化財は、文化財保護法では「衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能およびこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のために欠くことのできないもの」と定められています。また「我が国の国民が日常の生活、生業、行事等の場で、長い歴史を経て育み伝えてきた有形無形の文化的遺産であり、庶民の身近な生きた文化遺産である」(文化庁『民俗文化財の手びき』より)とも定義づけられています。
そもそも「民俗」とは普段は聞き慣れない言葉ですが、一言で説明すると「世代を越えて伝承されてきた文化」のことです。自分の親、自分の祖父母、そして曾祖父母、先祖以来、伝えられてきた人々の知恵・知識の体系といえます。
さて、民俗文化財は「無形民俗文化財」と「有形民俗文化財」の2種類に大きくわけられます。「無形民俗文化財」は、祭りや年中行事、人生儀礼(冠婚葬祭)、昔話・伝説といった口頭伝承など、行事や伝承そのものに形があるわけではなく、慣習として行われているものです。そして「有形民俗文化財」は、衣食住や生業、信仰、年中行事などの民俗で用いられてきた道具のことで、一般的に「民具」とも称されています。その民具は日本人が「日常生活の必要から技術的に作り出した身辺卑近の道具」(渋澤敬三『民具蒐集調査要目』)で、容易に入手できる身近な素材を材料として、伝統的技法によって製作されたものと定義されています。
民具は生活を維持、促進させるために技術的に作られたものであって、現在の高度消費社会、つまり「ものづくり」(生産)が身近に見えないままに、「もの」を消費していく今の時代とは対照的な歴史的・文化的遺産ともいえます。ただし、民具はすでに過去の「もの」になっているわけではありません。年配の方には、それを使用していた人、もしくはそれを使用していたところを見ていた人がたくさんいます。今の時代において完全に「過去の遺物」になっているわけではありません。民俗とは「世代を越えて伝承された文化」と述べましたが、高度経済成長期以降は「民俗」が伝承される機会が減ってしまったのです。たとえ今の若い世代が民具を日常的に使わなくても、民具に込められた知恵・知識(文化)を学ぶ環境を整え、機会を与えることは、現代の責務ともいえます。現在は、民具の消滅の危機の時代ともいえますが、実際には、民具に込められた知恵・知識(文化)の消滅の危機なのです。この知恵・知識は、道具を実際に用いる体験を通して伝えられるものであり、文字や書籍によって記録されて教えられるものではありません。今の世代が民具の知恵・知識を伝える環境を整えなければ、何世代にわたって継続してきた知恵・知識の伝承が「無」になってしまうのです。民具を保存・活用していく意義はここにあり、だからこそ時代性と地域性を理解するための「文化財」と位置付けられているのです。
そして現在、高齢者介護の現場で民具を使った「回想法」が盛んになってきています。人は何かをきっかけとして過去の出来事を思い出し、懐かしむことがあります。昔懐かしい生活道具を用いて、かつて経験したことを語ったり、思いを巡らすことで生き生きとした自分を取り戻そうとするものです。
高齢者の回想をうながす手段として、近年、民俗・民具が取り入れられた取り組みが増えて来ています。イメージをふくらませて、より豊かな回想・記憶を引き出すために、さまざまな道具が使われ、そこでは民具が中心的な役割を果たすことが可能なのです。つまり、民具には、世代を越えて伝えられた文化(知恵・知識)がそこに込められており、それを高齢者が、懐かしさをもって、再び手にすることで、過去の記憶を引き出そうとすることができるのです。
民具は、日常生活の必要性から製作・使用されてきた伝統的な道具です。言ってみれば「生きるため」に編み出され、使われた道具です。同じ地域社会で育った者であれば、誰もが一応の共通理解を示すものでもあります。農作業や家事労働、子どもの遊びなど、共通したことがたくさんあります。たとえば民具を使用してきた年配の方に実際に民具を介在させながら、若い世代(教師、児童、生徒など)がお話をうかがうことで、地域の記憶を学ぶ教材にもなり、年配の方にとっても自分そして地域の記憶を呼び起こす素材にもなりうるのです。
民具(民俗資料)は地域の記憶を呼び起こす文化遺産です。
民俗文化財は、文化財保護法では「衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能およびこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のために欠くことのできないもの」と定められています。また「我が国の国民が日常の生活、生業、行事等の場で、長い歴史を経て育み伝えてきた有形無形の文化的遺産であり、庶民の身近な生きた文化遺産である」(文化庁『民俗文化財の手びき』より)とも定義づけられています。
そもそも「民俗」とは普段は聞き慣れない言葉ですが、一言で説明すると「世代を越えて伝承されてきた文化」のことです。自分の親、自分の祖父母、そして曾祖父母、先祖以来、伝えられてきた人々の知恵・知識の体系といえます。
さて、民俗文化財は「無形民俗文化財」と「有形民俗文化財」の2種類に大きくわけられます。「無形民俗文化財」は、祭りや年中行事、人生儀礼(冠婚葬祭)、昔話・伝説といった口頭伝承など、行事や伝承そのものに形があるわけではなく、慣習として行われているものです。そして「有形民俗文化財」は、衣食住や生業、信仰、年中行事などの民俗で用いられてきた道具のことで、一般的に「民具」とも称されています。その民具は日本人が「日常生活の必要から技術的に作り出した身辺卑近の道具」(渋澤敬三『民具蒐集調査要目』)で、容易に入手できる身近な素材を材料として、伝統的技法によって製作されたものと定義されています。
民具は生活を維持、促進させるために技術的に作られたものであって、現在の高度消費社会、つまり「ものづくり」(生産)が身近に見えないままに、「もの」を消費していく今の時代とは対照的な歴史的・文化的遺産ともいえます。ただし、民具はすでに過去の「もの」になっているわけではありません。年配の方には、それを使用していた人、もしくはそれを使用していたところを見ていた人がたくさんいます。今の時代において完全に「過去の遺物」になっているわけではありません。民俗とは「世代を越えて伝承された文化」と述べましたが、高度経済成長期以降は「民俗」が伝承される機会が減ってしまったのです。たとえ今の若い世代が民具を日常的に使わなくても、民具に込められた知恵・知識(文化)を学ぶ環境を整え、機会を与えることは、現代の責務ともいえます。現在は、民具の消滅の危機の時代ともいえますが、実際には、民具に込められた知恵・知識(文化)の消滅の危機なのです。この知恵・知識は、道具を実際に用いる体験を通して伝えられるものであり、文字や書籍によって記録されて教えられるものではありません。今の世代が民具の知恵・知識を伝える環境を整えなければ、何世代にわたって継続してきた知恵・知識の伝承が「無」になってしまうのです。民具を保存・活用していく意義はここにあり、だからこそ時代性と地域性を理解するための「文化財」と位置付けられているのです。
そして現在、高齢者介護の現場で民具を使った「回想法」が盛んになってきています。人は何かをきっかけとして過去の出来事を思い出し、懐かしむことがあります。昔懐かしい生活道具を用いて、かつて経験したことを語ったり、思いを巡らすことで生き生きとした自分を取り戻そうとするものです。
高齢者の回想をうながす手段として、近年、民俗・民具が取り入れられた取り組みが増えて来ています。イメージをふくらませて、より豊かな回想・記憶を引き出すために、さまざまな道具が使われ、そこでは民具が中心的な役割を果たすことが可能なのです。つまり、民具には、世代を越えて伝えられた文化(知恵・知識)がそこに込められており、それを高齢者が、懐かしさをもって、再び手にすることで、過去の記憶を引き出そうとすることができるのです。
民具は、日常生活の必要性から製作・使用されてきた伝統的な道具です。言ってみれば「生きるため」に編み出され、使われた道具です。同じ地域社会で育った者であれば、誰もが一応の共通理解を示すものでもあります。農作業や家事労働、子どもの遊びなど、共通したことがたくさんあります。たとえば民具を使用してきた年配の方に実際に民具を介在させながら、若い世代(教師、児童、生徒など)がお話をうかがうことで、地域の記憶を学ぶ教材にもなり、年配の方にとっても自分そして地域の記憶を呼び起こす素材にもなりうるのです。