最近、「縄文」がブームになっている(ような気がする)。
これまで、縄文時代から弥生時代、そして歴史時代への移行を論じるにあたっては、採集狩猟経済から生産経済へ発展するといった進化論的な考えがそこにあった。エンゲルスの野蛮から未開へ、そして文明へという発展法則に照らし合わせて、縄文(イコール野蛮もしくは未開下位)、弥生文化(未開中位)、そしてその後の文化(文明)を見てきた感がある。学校で教わる歴史の教科書にもその視点ははっきり見えるし、研究者の間でもそうである(あった)。
近年、東北地方において相次いで高度な文化を持つ縄文遺跡が発掘され、縄文史観がくつがえされており、また、東北文化研究センター(赤坂憲雄氏)の提唱する「東北学」は「ひとつの日本からいくつもの日本」と称して、東北をベースに民族史研究を行うことで、これまでの西日本(畿内)中心史観を揺さぶろうとしている。
さて、ここ愛媛でも、「縄文」を視野に入れた新たな研究成果が生まれている。近藤日出男氏の食文化史の研究である。先日刊行された『四国食べ物民俗学』(アトラス出版)は、近藤氏が四国山地をフィールドワークし、ドングリやトチ、彼岸花、トウキビなどの食文化が「縄文」から連綿と続くものであることを紹介している。これまで、愛媛の民俗研究では「弥生」は見えても「縄文」までは視野に入っていなかったと思う。その意味で近藤氏の成果は画期的である。
これまで発展法則に基づいた縄文観ではあったが、現在にも縄文文化は身近に息づいていることを目の当たりにすると歴史も違ったように見えてくる。 2000年05月08日