クリーンなエネルギーとして脚光を浴びている風力発電に逆風が吹き付けている。風速によって出力が大きく変わる風力発電の増加に伴い、家庭や会社 に送られる電気の「質」が落ちる心配が高まってきたとして、電力会社が風力発電の電気の購入を抑え始めている。政府は、風力発電の出力を10年度までに今 の3倍の300万キロワットに引き上げようとしているが、目標達成は難しそうだ。
風力発電は通常、一般企業が設置し、電力会社に電気を売っている。環境意識が高まるなか、二酸化炭素を排出しないために急速に広まり、全国に設置 された風車の出力は昨年度末で100万キロワットを突破。しかし、電力会社側は最近、これまでの「無制限購入」を見直している。
北陸電力は今年度から、風力発電で出力された電気の募集(購入)枠を2万キロワットにした。すでに応募がそれを上回り、22日に契約相手を絞る抽選会を開く。
同社は3月に、営業地域内での受け入れ出力枠を15万キロワットに設定した。その時点で約10万キロワットは決定済みで、05、06年度は残る枠を2万キロワットずつ分けた。
昨年度は募集枠を設けなかった中国電力も今年度は5万キロワットに限定。四国電力はすでに受け入れ枠がいっぱいで、今年度の募集はゼロだ。
電力会社は、電気の需要に合わせて火力発電所などの運転を調整する。出力変動の大きい風力発電が増え、送電網につながると、全体の出力制御が難し くなり、工場などへ送る電気の周波数を一定に保ちにくくなる、というのが業界の主張だ。周波数が不安定だと、電気機器などにトラブルの恐れがあるという。 新たな取り組みも始まった。北海道は「送電網への影響が大きい時期には電気を買い取らない」との条件付きで今年度に募集。東北は、蓄電池を組み合わせ、 風力で発電した電気を安定させることを条件に約5万キロワット募る。ただ、主要電力会社の既存の受け入れ枠は既にほぼいっぱいなだけに、政府目標は風前の ともしびだ。
エネサーブ、重油の自家発電撤退 原油高で赤字転落 (朝日新聞) - goo ニュース原油高で、重油を燃料にした自家発電事業が採算悪化にあえいでいる。自家発電代行大手のエネサーブ(大阪市)は18日、同事業からの撤退を発表。電力会社よりも安い電気料金で急成長してきた同業各社に暗雲が広がっている。
エネサーブは、A重油を燃料とする「オンサイト発電」設備を全国で約7800台展開。発電容量は計約150万キロワットで、原発1基分以上に相当する。同事業の市場占有率が約7割の最大手だ。
しかし、最近の急激な原油高でA重油の価格も上昇。電力会社より安く電気を提供するための上限とされる1リットルあたり55円を超え、65~70 円まで値上がりし、事業の継続の断念に追い込まれた。18日に記者会見した深尾勲社長は「事業の存続をあらゆる角度から検討したが、重油高騰はコスト削減 努力を超えていた」と苦しい胸の内を明かした。
事業撤退で同社は今後、オンサイト発電装置の撤去作業を開始する。1576億円の特別損失が発生するため、06年度の業績予想を大幅に下方修正し た。売上高は当初予想より42.9%減の327億円になり、5億円の黒字を予想していた経常損益も217億円の赤字に転落する。売上高が半減するため、今 後は人員整理など合理化の検討に入る。
同業界では、九州電力子会社の西日本環境エネルギー(福岡市)が昨秋、重油発電事業から撤退した。事業の撤退や縮小を余儀なくされる事例が増えそうだ。
8月18日付・読売社説(1) (読売新聞) - goo ニュース
原子力発電を、確固たる国家戦略として進める――。経済産業省資源エネルギー庁がまとめた「原子力立国計画」が、そう宣言している。
電力会社など民間に任せておいては、原子力発電の維持、推進に必要な課題の解決が先送りされるとし、国が先頭に立つことを表明している。
まず、電力に占める原子力発電の比率を30~40%以上に維持するため、電力会社を支援する。具体的には、原子力発電所の建設費積み立てを可能にする制度の創設などを挙げた。次世代の原子炉を国主導で開発する方針も掲げている。
原発の使用済み核燃料を有効活用する核燃料サイクル計画についても、推進を明示した。その主役となる高速増殖炉は2050年をめどに商業利用を可能にする、という目標を示している。
エネルギー資源確保のため、国際的に原子力への期待は高まっている。欧米も政府が主導する新たな原子力政策を次々に打ち出している。こうした動きに日本も遅れるわけにはいかない。
市場原理、民間主導を根幹とする電力自由化が動き始めて久しい。自由化を追求する反動から、原子力政策でも、国の消極的な姿勢が目立った。特に、核燃料サイクル計画では、推進役であるはずの経産省から、高コストを理由に凍結を唱える意見が出る始末だった。
政府の姿勢が揺らいでは、民間は慎重にならざるを得ない。メーカーは技術投資を圧縮する。人材も減る。
計画が冒頭でうたっている「中長期的にブレない」ことが大事だ。人材の育成や研究開発推進など、盛り込まれた具体策を着実に実現しなくてはならない。
ただ、原子力発電の現状を見ると、いささか心配なところがある。運転の支障になるようなトラブルが多過ぎる。稼働率も低迷している。
03年度は、60%を下回った。04年度も68・9%止まりで、昨年度は72%だ。地球温暖化対策もにらんで、政府は稼働率を87%以上にする目標だが、はるかに届かない。今夏も12基が停止中だ。
東北電力女川原発では、配管の厚み管理がずさんだったり、制御棒を入れ違えたり、と問題が続出し、計3基が停止している。経産省も厳重注意した。
技術力に不安を抱かせる例もある。国内メーカーの最新型タービンの羽根の脱落と破損だ。6月以降、中部電力浜岡原発と北陸電力志賀原発が、このトラブルで停(と)まっている。いずれも新設炉で、設計施工ミスの疑いが浮上している。
安全確保の努力と技術力の維持・向上なしに、原子力立国はあり得ない。