ミクシィ上場、買い殺到 ネット業に新世代台頭
日本最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営するネットサービス会社「ミクシィ」が14日、東証マザーズ市場に上場した。売上高 18億円の新興企業に買い注文が殺到し、初日は値がつかない人気ぶり。次世代ネットサービスの旗手は、「ライブドアショック」以降、株価低迷が続くネット 業界の救世主になれるのか。
●570万人の輪、集客力に
「ミクシィは、ネット上で居心地のよい空間を目指してきた。利用者が増えれば増えるほど、価値が上がるサービスだ」
東京証券取引所で開いた会見で、笠原健治社長(30)は自社の「売り」をこう説明した。
利用者は自分のページに履歴書で身元を明かしたうえで、日記を書いたり、他の利用者とメッセージを交換したりする。既存会員の紹介がないと入れない。共通の趣味の人が集まる「コミュニティー」づくりも盛んだ。
東京都に住む男性会社員(33)はミクシィの自分のページに週数回、日記や読んだ本の感想を書く。友人約40人とメッセージをやり取りし、中学や高校の同窓生が集まるコミュニティーにも参加している。
学生は就職活動の際に参考になるようなコミュニティーに参加したりして情報を集めている。
お互い身元がわかり、安心して仲間入りできる点が受け、会員数は570万人に達した。
ビジネス分野でも活用されている。大塚製薬は7月中旬、ミクシィ内に炭酸飲料「ファイブミニ」のキャラクターが登場する公認コミュニティーを開設。2600人の参加者を集めた。ホームページのすみに広告を出すより、利用者に商品を強くアピールできる、と考えた。
ミクシィは原則的に会員から利用料金は取らない。武器は集客力だ。「人が集まる場」を、広告の機会に使いたいと企業が寄ってくる。ミクシィの広告収入は 急増。07年3月期の売上高は前年比2・5倍の47億円になる見通しだ。広告を収益源にする他のネット企業も危機感を強め、ヤフーや楽天も、相次ぎSNS に参入。「消費者参加型」はネットの主戦場になりつつある。
●楽天やUSENは急落
この日、ミクシィ株には取引開始直後から買い注文が殺到。買い気配値は公開価格の155万円の倍近い315万円まで跳ね上がった。
東京証券取引所は取引所内の電光掲示でミクシィの初値がつけば、15分間、独占表示することを決めていた。その「特別扱い」は、翌日以降に持ち越しとなったが、気配値の水準で値が付けば、東証マザーズで時価総額2位に躍り出る勢いだ。
今年1月のライブドアショック以降、新興市場は低迷が続き、東証マザーズの指数は年初に比べ50%低い水準だ。それだけに、ミクシィは「個人投資家の心理を好転させる大型ルーキー」として、上場前から市場関係者の関心を集めてきた。
ミクシィの出足は好調そのものだったが、波及効果が期待された新興市場は、この日、全体ではそろって下落。市場では「ミクシィに人気が集中したことが、主力株の売りにつながった」との声も出た。
ジャスダック上場の楽天株の終値は前日比4000円安の4万5800円のストップ安。大証ヘラクレス上場のUSEN株も同48円安の998円と約1カ月半ぶりに1000円を割り込むなど、一世代前のネット関連企業は下落を続けている。
世代交代が進む半面で、全体の底上げには力不足――というのが現状のようだ。
●「ウェブ2.0」投資過熱中
SNSは米国でも注目の的だ。最大手のマイスペースは昨年7月、メディア王のルパート・マードック氏率いるニューズ社が5億8000万ド ル(約680億円)で買収。今年8月にはインターネット検索大手のグーグルが、マイスペースに検索機能と広告を提供するとともに約3年間で9億ドル(約1 千億円)以上を支払う提携契約を結んだ。
マイスペースは、今年8月に会員数が1億人を突破。調査会社によると、米国での7月の閲覧者数はヤフーやマイクロソフト、グーグルなどに次ぐ7位に食い込んだ。
日本でも次の「ミクシィ探し」が過熱する。
起業支援のGMOベンチャーパートナーズは昨年12月、「ウェブ2・0」企業に投資するファンドを立ち上げた。すでに10億円の資金を集 め、九つの企業に投資。投資先の経営者の多くは20代で、社員5人の会社もある。「いかに早く『原石』を見つけるかが勝負だ」(GMO幹部)
ただ、物珍しさが先行している感もある。「いまのSNSはメールやブログと大差ない。グーグルのように、本物の技術力、革命的なサービスで世の中を変えていけるかが、今後のカギだ」(カブドットコム証券の山田勉マーケットアナリスト)
米国では、利用者の急増とともに個人情報がさらされることへの警戒感も出始め、未成年者の利用を制限する動きも出ている。
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