椿神社崇敬者大会記念講演「新しい御代を前にして」(久能靖氏)に出席してきました。陛下のお人柄など貴重な話を聞かせていただきましたが、その辺は講演を聴いた人の特権として(笑いの絶えない講演でした)、筆者は制度面や自分で調べたことを記事にしておきます。
今年は皇位継承が行われ、年号が変わる年になります。御退位は今上陛下のビデオメッセージでのお気持ち表明をきっかけに決まったことですが、その背景に健康問題があります。体力面でご公務が難しくなってきているようで、これは高齢化社会を迎えた現代の問題でもありますが、代行されることを良しとしない陛下のお考えでもあるようです。2016年(平成28年)8月8日のお言葉では殯についての言及もありました。
>これまでの皇室のしきたりとして,天皇の終焉に当たっては,重い殯の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き,その後喪儀に関連する行事が,1年間続きます。その様々な行事と,新時代に関わる諸行事が同時に進行することから,行事に関わる人々,とりわけ残される家族は,非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。
これまでの制度だとこの殯というしきたりと天皇即位に伴うご公務を両立せねばなりません。(老老介護や老老継承の問題が横たわる)高齢化社会においてはこれをご高齢の新陛下がこなすことが通常になるでしょう。今回のご退位は皇室典範特例法によるものですが、恒久的制度の方が良いのではないかというお考えのようです。随分踏み込まれている感じですが、「皇室番黒革の手帳」(大木賢一 宝島新書)なんかを参照すると、今上天皇は皇太子時代から積極的な発言や行動をされており、それが現在の陛下の姿に繋がっているようです。伊勢湾台風での被災地訪問は今上陛下が打ち出した新基軸だったとのこと。皇室が政治に口出しするのは問題もあるでしょうが、皇位継承やご公務に関して国民にメッセージも送れないのような窮屈な話は疑問で、憲法4条7条で政治的発言ができないのような風潮がありましたが、考えてみれば「国政に関する権能を有しない」というのは陛下が発言されようが何だろうが国政に関する権能は有しないのであって、政治的発言が何ら憲法違反でないことは明らかのように思えます。憲法を尊重することと憲法改正を提起する(ような)ことは矛盾しないことも明白です(寧ろ言論の自由と憲法改正条項から提起できないと発言する人が全くの憲法違反で180度逆です)。ただ、憲法7条で定める国事行為がご公務であって、日本の象徴として儀礼を執り行うのが仕事で、政治介入が望ましくないのは勿論です。またそうしたあり方が皇室の伝統でもあると思います。しかしながら皇室の行事を行い皇位継承を行うのは寧ろ皇室が主体になって行うべきことでもあって、決定権は国民や議員にあるにせよ、こうしたことに関しては「政治的発言」をされる方が望ましいあり方と言えるのかもしれません(国政の承認のような主体的でない儀礼と主体的に行う儀礼や自分(達)自身の話は別に扱うべきだと考えられます)。正直ご退位に関する発言は違和感もありましたし、変えることに反対の気持ちもありましたが、少なくとも今では筆者は陛下の一連の問題提起は良かったと思います。
今上陛下の体調も優れないところはあるようですが、皇后陛下の体調が特に優れないようです。皇后陛下には1993年に失声症になったという話がありますが(
皇后美智子(ウィキペディア)参照。失語症は大脳の損傷に由来し、心因性の原因から来る失声症とは分けた方が良いようです。回復後「どの批判も、自分を省みるよすがとしていますが、事実でない報道がまかり通る社会になって欲しくありません」と異例のコメントがあったとか)、久能氏が特に指摘した皇后陛下の病歴はめまい・喘息状態・頚椎症性神経根症でした。めまいは若い女性のメニエル病でも知られますし、様々な病気に付随するので何とも言えませんが、資料によると腸壁の出血の後と一緒にめまいの症状があったそうです(中高生の時に筆者は
起立性調節障害(恩賜財団済生会)と思われる症状でめまいを頻発させていましたが何時の間にかほぼ発症しなくはなっていますし全然違う話だと思われ何とも言えません)。喘息症状に関して言えば、アレルギーの一種ですが、現代病ですし清潔過剰が問題という衛生仮説が怪しいような気もします(参考:
「いま、アレルギーのメカニズムが大きく塗り変わろうとしています」(斎藤博久インタビュー①))。具体的には少量のエンドトキシンに繰り返し曝露することが必要だとか。一方でアレルギーマーチを防ぐためにはバリア機能の弱い乳幼児の皮膚の保湿も重要だという話です(他に参考:
赤ちゃんにおすすめの保湿剤12選〜ママ厳選のお肌に優しいアイテム〜 smarby)。アレルギーに関して言えば、(個人的な話で申し訳ありませんが)これまた高校生の時中心に温熱蕁麻疹や寒冷蕁麻疹があったのですが、これも自然治癒しています。ストレスも関係あるようですが(参照:
蕁麻疹(じんましん) - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会))、よほど受験が嫌だったのか何なのか(この蕁麻疹や花粉症(←現在も闘病中。口呼吸と関係ある気もしてますが癖ですし中々)の関係で喘息やアトピーはありませんが自分なりにアレルギーは調べてはきました)。
頚椎症性神経根症(日本整形外科学界)は頚椎を後ろへそらせるのが良くないのだそうですが、(筆者に無縁で医者でなく知見もありませんから)さすがによく分かりません。話は逸れましたが、皇室報道と言えばバッシングがつきもののような気もしますが、報道も必要・意見も必要であるにせよ、節度がないと大変なことになりそうだなとは思いますね。侍医制度や宮内庁病院に関しては特に触れないものとします。
ご譲位は光格天皇以来になりますが、それまでは結構ある話でした(筆者などは上皇と聞くと二重権力や政争のイメージがあるほどで、それで反対意見でしたが、今の制度なら杞憂だったのかもしれません)。改元も125代の歴史で247回あって大化が最初でしたが(大化の改新の大化で皇極天皇4年(645年)の孝徳天皇(難波宮に遷都)即位のときから実施)、明治天皇の先代孝明天皇の時には6回も行われています。さすがに現代で頻繁に改元されるのは国民生活に影響もあると思いますが、一世一元の制は陛下がまだ元気である内に準備を整えて行う方がスムーズなんだろうと思います。考えてみれば日時が確定できない御崩御の時に全てを行うのは大変な話です。ただ皇室典範4条の問題があって(今回は特例法でしたが)、新陛下の代に皇位継承の問題とあわせてこの問題は議論され解決されることが期待されると思います。
新元号ですが、これまでは中国古典から採っていましたが日本書紀など日本の古典から採るという話もあるようです。筆者は大賛成ですが、最初に古事記だけの漢字を採用するのは止めた方がいい気はしています。古事記は本居宣長以来再評価されており勿論貴重な古典ですが、日本書紀が正史ですし日本書紀との齟齬もあって評価するあまりどちらが正でどちらが副かを忘れるようなことがあっては、後々面倒なことになります(旭日旗を再評価する動きは結構なことだと思いますが、日章旗が日本の旗なのであって、自衛隊の旗・海自の旗が日本の旗と受け取られるような話は困るという話に似ます)。
式典ですが、資料として配られた平成の御代替わりに伴い行われた式典一覧を見ると、35の式典が行われその内国事行為と総理主催の行事は10だったようです(他は皇室の行事)。ひとつだけ「剣璽等承継の儀」(剣璽渡御の儀)に関してまとめておくと、
剣璽(ウィキペディア)とは、三種の神器の内、天叢雲剣と八尺瓊勾玉を併せた呼称で御所の天皇の寝室の隣に土壁に囲まれた塗り籠めの「剣璽の間」があってワンセットで扱われることが多いようです。ただ、御所の天叢雲剣も熱田神宮の形代のようですが、八咫鏡も伊勢神宮の内宮の形代が宮中三殿の賢所にあって、承継されるのはやはり三種の神器と考えてよく、それで剣璽等というようです。戦前は、天皇が皇居(宮城)を一日以上離れる場合に、必ず侍従が捧げ持ち随行したそうで、これを剣璽動座というようです。GHQの指令で剣璽動座は中止されたものの第60回式年遷宮の翌年である1974年に昭和天皇が剣璽を伴って神宮を参拝した時以来、天皇の神宮参拝の際には携行されるようになったようです。八咫鏡が特殊な感じですが、天照大神の御神体として内宮に安置されており、天皇陛下は直接参拝しない伝統が明治までありました。剣璽と違って何か持ち歩くものではないんでしょうね。神社のご神体に鏡は多いようです(
神社に鏡がある理由・意味は?ご神体についても詳しく紹介します! 終活ねっと)。
最後に印象に残った話ですが、陛下は「普段は忘れられていても構わないが何かあった時思い出してほしい」というようなことを仰ったそうです。