「親の当事者研究」について語るためには、
本当は研究してきた「当事者」に語ってもらうことが必要です。
でも、べてるのように、自覚的に「研究」に取り組んではいないので、
今のところ目に見える「研究レポート」はありません。
ただ、べてるも最初から「当事者研究」として取り組んでいた訳ではなく、
病気があってもありのままで地域のなかで生きていくために、
どうしたらいいのかを考えてきたのです。
その中から、「非援助の援助」、「助けないという助け方」が
根付いていき、どんなときでも「自分自身と、仲間の経験の中に、
今の生きづらさを解消し、解決するヒントがある」という理念をもとに
研究する活動が生まれました。
こう書いだけでも、やはり私たちのやってきたことと同じだと思います。
書き換えてみます。
『子どもに障害があっても、ありのままで地域のなかで生きていくために、
どうしたらいいのかを考えてきたのです。
その中から、親の付き添いという「余計な援助」はいらない、
監視のような「余計な援助」はいらないということを知り、
どんな障害があっても子どもが自分の力で拓いていくやり方を信じること、
そのことを援助することを私たちは、子どもたちに教えてもらってきたのです。
それは「非援助の援助」「助けないという助け方」そのものでしょう。
どんなときでも、子ども自身と、仲間の経験の中に、
今の生きづらさを解消し、解決するヒントがあるという思いをもって、
私たちはこの20年の間、活動してきたのです。』
そっくりでしょ(・。・)
強引に結びつけている訳ではありません。
少なくともわたしの中のジグソーパズルでは、
どのピースを入れ替えてもぴったり収まるのです。
そういえば、20年前に、三好春樹さんの『生活リハビリとはなにか』を
読んだときにも、同じ思いを感じたのを覚えています。
その本の中で、老人介護について三好さんが書いていたのは、
「介助は関係づくりの手段」という言葉でした。
そして、専門家の治療やリハビリよりも、
ふつうの生活こそが、老人を生き生きさせるということが書かれていました。
そのときに私は、『共通して起きてくる問題の裏側には、必ず、
共通した解決に向けたヒントが隠されている』ということを実感しました。
老人の問題も、精神障害の問題も、虐待された子どもの問題も、
ハンセン病のことも、災害救援のことも、人間の苦しみに関わることには
共通した援助のヒントがあるのだと思ってきました。
少し話がそれました。
私たちが、障害児を普通学級へ、普通高校へ、という形で進めてきたことは、
「子どものため」でした。
子どもが主人公であるという思いから、
普通学級や普通高校にこだわってきたのです。
小夜さんの、子どもを分けてはいけない理由も
「子どもが分けられたがっていない」ということでした。
だから、私たちは、「障害をもつふつうの子ども」が「当事者」である
という思いをもってやってきました。
それはそれで、間違いではありません。
ただ、当事者である子どもが「分けられたがっていな」くても、
「幼稚園のみんなと一緒の小学校に行きたい」と口にしても、
親がその思いを受けとめ、親自身が行動しなければ、
子どもの思いは実現しません。
去年の就学相談会でも、こんな言葉を聞きました。
「障害があっても普通学級に入れることは分かりました。うちの子どもも
『幼稚園のお友だちと一緒に小学校に行きたい』と言っています。
でも、それって、教育委員会に『逆らう』ってことですよね…」
「逆らう」という言葉が不思議と新鮮でした。
そう、障害児が普通学級や普通高校に行きたいと願うとき、
もっとも厚く高い壁は『親』でした。
障害をもつ子どもの思いや、学校生活の様子を伝えるだけでは、
子どもの当たり前の生活を援助することはできません。
そう、この問題で「当事者研究」が必要だったのは、
子どもよりは、むしろ「親」でした。
今まで20年あまり、目の前で次々と起こる「子どもの問題」
(本当は親や学校の問題)に対応するのにせいいっぱいで、
親の当事者としての問題はあまり正面から考えてはきませんでした。
でも、小学校も中学校も高校も、どんな障害があっても、
子どもたちは一緒にやっていけるということは、
この20年、30年の実践で証明されたました。
だから、そろそろ親の「当事者としての問題」を、
べてるのように研究しないといけないような気がします。
≪お知らせ≫
2008年12月21日(日)
千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会
20周年記念集会
≪自立に向かって邁進せよ≫
千葉県教育会館にて
コメント一覧
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さぬき イシカワ
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ワニなつ
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さぬき イシカワ
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