今までと違うかたちの就学相談会のために (その5)
残念ながら私と同年代以上の人は、「障害をもって安心して(怖れないで)生きる子どものために、大人としてどのようにふるまうべきか、ということを、親や教師になる前に学んだことがありません。
親が、子どもの笑顔につられて、ふつう学級という考えが心をよぎるとき、大人として感じる訳の分からない不安や感情には、それなりの根拠と意味があります。
自分の子ども時代に、障害のある子や、勉強ができなかった子、いじめられ仲間はずれにされていた子が、どんな目にあったかを目の当たりにしてきました。
教師の体罰や暴言、支配に抵抗できる子どもは、今も昔も多くはありません。
障害児がふつう学級を希望すると、「いじめられますよ」と口にする校長が、北海道から沖縄まで本当に全国にいるのはあまりに象徴的です。
今では、そのさまざまなやり方や手口がオープンにされます。
その事情が表に出て、オープンに語られることが増えれば増えるほど、状況が変わる日も早くなり、不安も軽減されていくでしょう。
性差別、性同一性障害への学校の理解、妊娠した生徒を退学にするのが当たり前だった高校の文化も変わりつつあります。
21世紀に新しくできた学校にはすべてエレベーターがついています。
保育園や学校での医療的ケアが広がりつつあります。
今までの医療では命が助からなかった赤ちゃんが助かるようになりました。
親と医療者が助けた赤ちゃんの命。
その命の数年先を助けるのが保育園や学校にいる大人の役割として理解されつつあります。
こうした学校文化の変化は、何を示しているでしょう。
困難にある子どもの状況を支援することに、なんの遠慮もいらない。
そのことを認める社会であれば、どの子も「隠さなければいけない事情」を一人で抱えてひとりぼっちということはなくなります。
私たちが、手を伸ばし握りしめたかったのは、そのひとりの子どもの手でした。
就学相談会とは、障害児がふつう学級がいいか特別支援がいいかを話したかったのではありません。
ただ子どもの手を、握りしめていたかったのです。
この子がさびしくないように。
この子の笑顔を守るために。
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