ワニなつノート

ほうきと生米(その2)

ほうきと生米(その2)


先日、hideの件で、JIL(全国自立生活センター協議会)による事情聴取?がありました。Hideのお母さんと、事件そのものもひどいけれど、それ以上に事後の対応が鈍すぎること、あまりに被害者であるhideと家族に対する誠意がないことを話しました。

JILの方が自己紹介をはじめてすぐに、私のなかに安心感が広がりました。この人なら、hideのお母さんも、「苦しまずに」話ができると。

今まで、hideの件で、事業所と話し合って感じたことのない「感じ」でした。それは、一言でいえば、人としてごくごくふつうの対応、のことだと思いました。我が子が箒の柄で殴られ、生米を食わせられて、苦しい思い、情けない思いをしているのは、hideの親なのに、事業所と話すたびに、親が苦しい思いをさせられることが異常なことだと、あらためて感じます。

一つ一つの対応の、何が間違いで、どこを変えるかという話ではなく、まず何よりも被害者であるhideの立場を思いやれるか、hideの親の立場を思いやれるか、というだけの話しです。

だから、親が苦しい思いをしているなら、それだけで事業所の対応が間違いなのです。


ここ数日の対応で、我慢ならなかったのは、市の障害福祉課を通じて、事業所の嘱託医?である医師との話し合いを斡旋されたこと。薬でhideをおとなしくさせようという意図が見え見えなので、当然断りました。

以前、同じ事業所のK君が、女性職員の肩や腕に触れることを問題にされ、その医師の診断を受けるように言われた時、MRIを取られ、薬を飲ませましょうと言われたそうです。当然、断りました。

また、今回の事件を受けて、「もしhideが暴れたりした時には、警察を呼ぶように」という指示がなされたという話を聞きました。

障害者を、「薬」と「警察」から守るのが、「自立センター」だろうと、私は思ってきました。

「言うことを聞かない」→「言葉が通じない」→「暴れる」=「薬と警察でおとなしくさせる」
そんなヘルパーならいない方がいいでしょう。

前回の話し合いの時、担当の人が、hideが怒って叩いたりするときの対応ばかりを説明するので、質問しました。
Hideは自分で言葉で伝えられない分、自分の言いたいことが伝わらないことが続くと、怒って乱暴になることがあるのは分かるが、もともとはおとなしい性格で、私がつきあっていた高校生までは、そんなに頻繁に困るような行動はなかったけれど、今は違うのか?そんなに頻繁に怒っているのか?

しばらく考えて、「月に一度…くらいかなー」という答えが返ってきました。

初めての介助者や、なれない介助者、hideとどうつきあっていいか自信のない介助者、そうした介助者たちと24時間いっしょに暮らしていたら、そんな程度は自然なことじゃないのか。
私はそう話しました。

今回の事件は、hideが被害者であるのに、いつのまにか、「hideが暴れた時に、どうしたらヘルパーの身を守れるか」という話になっています。


             


前回紹介した、【認知症の「困った!」にどう対応すればいいの?】に、暴力的な行動についての文章があります。

《3.攻撃》
知力が衰えている人のなかには、年齢を問わず、ときにひどく怒ったり暴力的にすらなる人がいます。
これは驚かされると共に、おそろしいことでもあります。多くの時間と精力を費やして献身的に介護をしている家族介護者にとっては、これはものすごく傷つくことであり、苦しいものです。

通常、ひどいフラストレーションや不安によって攻撃性が引き起こされます。

◇ 何かを言いたいのに、誰もわかってくれない。
◇ 何かをしたいのに、誰も手伝ってくれない。
◇ 不快なことや痛みがあるのに何もできない。
◇ 他人にすごく依存していることに悩んでいる。
◇ 記憶の喪失やそれに伴うあらゆることが自分の身に起きていることに怒っている。

このような考えられる理由を検討してみてください。
そして、攻撃性の奥にある実に人間らしい望みをわかってあげてください。

たいていの場合、それは力と支配に関係しています。

混乱して治ることのない人は、自分の人生を支配することがほとんどできなくなってしまいました。攻撃は、彼らに残された数少ない力のひとつなのかもしれません。
彼らは、まわりの人が力を持ちすぎていると感じているのかもしれません。

すごく屈辱を感じているなかでできることの一つは、自分よりも弱いものを探してそこで粗野な力をふるうことです。

ときには、攻撃はまわりの人から切り離されたことに関係があるか、生きている人としての実感がもてないことに関係しています。

おそらく、本当に注目されたり配慮してもらったりするためにそこで残された唯一の方法が何らかの暴力をふるうことなのです。

ですから、攻撃はその人が人とふれあいと意味のある人生をとても必要としているというメッセージなのでしょう。

………


『認知症介護のために知っておきたい大切なこと』
トム・キッドウッド著 筒井書房1500円

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コメント一覧

yo
hiroさん、やすハハさん、ありがとうございます。

考えてみれば、小学校に入る前も、入ってからも、hideは「虐待」されました。
6歳の子どもが、同じ6歳の子どもたちとふつうに生活できないのは、虐待です。
中学のときにも、明らかに故意につけられたアザのことで先生たちと話し合いました。
定員が空いているのに、3年も高校生になれなかったのも、「虐待」でした。
今の事業所でも、暴力をふるわれたのは、これで6人目です。

でも、やられっぱなしであきらめたことは一度もありません。今回も、ちゃんとカタはつけます。

今日、市議会でhideの件が話されました。
明日の朝日新聞に掲載されるかもしれません。

そして、hideが少しでも安心して暮らせるように、いろんなこと、計画中です(o|o)




やすハハ
なんだかやりきれない気持ちでいますが・・。親が言ってくことがつらいなあと感じてます。でも今まで幾度も「あたりまえに」を貫いてきた経験がなければ、今回のようなことは、ナシにされていたのではないでしょうか。多くの障害者は、親が知っても「しょうがないこと」で終わってしまうのでしょう。
学校時代も騒いだりすると問題行動とされ、「教育的しつけ」をあたりまえにうけいれて・・。
暴力、体罰に正当性があるわけないのです。私もそっちの世界にいかなくて本当によかった、なんて実感しています。
この事業所は、ヤスも移動支援の申請をしようと思っていました。確か障害児の受け入れもしている地元では、大きな事業所ですよね。
ヘルパー個人と事業所の体質どちらにも問題がありますね。地元なので、この件はいろいろと一緒に検証?させてくださいませ。
hiro
ヘルパーという仕事に携わる者としてのやりきれない思いと、障害のある子をもつ母としての恐怖と悲しみ、怒りの気持ちを抑えることができません。

介助者としての私・・・。
知識も経験もない学生時代、初めて経験した介助の仕事は、認知症の方の宿泊介助でした。

それから資格を得て訪問看護ステーションでのワーカー、高齢者の在宅介護を支援するNPOでのコーディネーターを経験し、子育て期の長いブランクを経て、現在ホームヘルパーをしています。

初めての介助から現在に至るまで、私が大切にしてきたことは何かな?と考えました。それは、試験で問われるような専門?知識でも、かっこつけてスキルなんて呼ばれるものでもありません。

人と向き合う上で当たり前のこと…『誠実で謙虚であること』でした。

たとえどんな状況にある方であっても、私自身がどんな状況であっても、誠実に謙虚に向かいあうことがヘルパーとしての条件であり、専門性だと思っています。

相手の方が重く厳しい状況にある程、介助する側される側の関係は強く出やすくなります。それは強者と弱者の関係に陥ることでもあります。強者の立場では『不誠実な思い上がり』で、見えるもの、聞こえるもの、感じるものが180度変わってしまい、その上強者の屁理屈で正当化しようとする恐ろしい知恵までが働きます。

私は「できるヘルパー」ではありません。もっと上達した方が良いことも、もっと知識を得た方が良いことも山のようにあります。けれどこの大切なことだけは、頑固職人のオヤジみたいに、失わずにいたいです。

hideさんをこんなにも酷い目にあわせ、親の想いを踏みにじってもなお、大切なことに気づけない、積み重ねてきてしまっただろう過ちに向き合おうとしない人達の存在に、悔しく虚しい気持ちでいっぱいです。

「このようなことが二度と・・・」と、悲惨な事件がある度に耳にする言葉。本当は、一度たりともあってはならないのに。

大切にすることは何か?頭ではなく、胸の中で何度でも、いつでも問いかけながら、気持ちを新たに明日もお一人お一人に向き合うヘルパーであり、一人の人間でありたいと思います。




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