《5車線の対話》① スペシウム光線
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「〇か×かじゃなく△で考える」と言っていたのは誰だったか。
ヒロシマや沖縄、水俣病の問題を考えるときにも△ってどういうことかちっとも分からなかった学生のころ。
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今は△どころか、「5車線で聞く」にはどうすればいいかと考えている。
5車線とは、「脳から迷走神経系への回路は1車線」だが、「迷走神経系から脳への回路は4車線ある」という話。全部で5車線。
これなら、言葉のない子の声も、クソ生意気な子の声も聞こえるかもしれない。
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そういえば、ウルトラマンでも「ウー」は孤児のゆきの「お母さん」だったし、「ジャミラ」は「人間だったことをなしにされた」怪獣だった。「ヒドラ」は交通事故で死んだ子どもの魂が乗り移った怪獣。
ウルトラマンは、ウーにもジャミラにもヒドラにもスペシウム光線を出さず、途中で止めた。
「スペシウム光線を出さない」記憶が刻まれたのは、6歳の私が妹たちを守るために、酔った父という怪獣と闘っていたからかもしれない。
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そして8歳のときに私は、「ふつう学級に居てはいけない」怪獣になった。〇でも×でもない△の自分を隠したまま、子ども時代を生き延びた。
私がウルトラマンにあこがれたのは、スペシウム光線を出さなかった記憶のせいだったか。
さて、「5車線で聞く、話す」はどこだ?