千葉の「定員内不合格」について 2021
長い間、定員内不合格の理由は、「障害ではありません」と言われ続けてきた。
点数でもない、障害でもない。それなら、この子のどこが「不合格」なのかと、私は叫んできた。
「定員内不合格」を出した校長には説明責任があるはず。
相手は中学生なのだ。それが教育者としての校長の最低限の責任だろう。
例えば試験中にタバコを吸ったから不合格なのだと説明すれば、本人も納得するだろう。そして、どうすれば高校生になれるか、何をがんばればいいのか分るだろう。(これは実際に私が勤めていた定時制高校での実話。その生徒は懲りずに二次募集で受検、今度は試験中に喫煙はしなかったので合格。入学後の話はまた別の機会に。)
堂々と説明できることなら、堂々と説明すればいい。30年余り、そんなことを話し続けてきた。
そして、30年断られ続けてきた。
7年前に、はじめて県教委が「定員内不合格0」を目指すと口にした。それならば、定員内不合格を出した校長を読んで、「どうして定員内不合格を出したのか」聞くのが筋だろうと話してもきた。
でもそれは、できないと断られてきた。
□
2020年2月、船後議員と木村議員が連名で、「障害のある受験生の定員内不合格をなくし、本人が力を発揮できる合理的配慮の提供を求める要望書」を文部科学大臣に出してくれた。
そのときの要望事項は二つあった。
一つは栞音さんのための、【入試で提供される合理的配慮は、本人が力を十分発揮できるよう、日常的に本人と介助や意思疎通の経験がある者を指定することを、全国の教育委員会に周知して下さい。】
そしてもうひとつが、【障害のある生徒が、定員内で不合格になった場合、障害を理由としていないことを立証するよう教育委員会に指示してください。】だった。
7浪し高校生になれないまま亡くなった純くんと、19歳で亡くなった天哉くんの思いを添えて、お願いした。
□
その思いが通じたのか、今年、千葉県教育委員会が一通の新しい「通知」を出した。
その中に次のような言葉がある。
「定員内でありながら入学許可候補者とならない者が未だに多数存在しており、これは、県民の信頼を損ないかねない憂慮すべき事態であり、遺憾」
「特に、第2次募集等の受検者数が募集人員以下の学校については、特段の理由がない限り入学許可候補者とし、定員を確保すること」
「特に、いわゆる定員内不合格とする場合は、その理由について明確に説明できるようにすること。」
「その際、『総合的に判断した』のみの理由では、説明責任が十分に果たされているとは言えない」
「定員内不合格者を出した学校については、ヒアリングを行う予定」
□
ここだけ読めば、私が捏造した通知のようにも思われるだろう。でも、本物の県教委の「通知」なのだ。30年かかって、まだこんなところ、ではある。でも30年かけて、ようやくここまで、きた。それでも「定員内不合格」は、今年も100人を超えている。今年こそ、この通知の中身を実現させて、「定員内不合格」0を目指そう。
□
教学指第1555号 令和3年3月9日
令和3年度千葉県県立高等学校入学者選抜における定員の遵守について(通知)
このことについては、令和3年1月14日付け教学指第1250号「令和3年度千葉県県立高等学校入学許可候補者の決定について(通知)」で定員の遵守に努めていただいているところですが、過日実施された本検査及び追検査では、募集定員内でありながら入学許可候補者とならない者が未だに多数存在しており、これは、県民の信頼を損ないかねない憂慮すべき事態であり、遺憾であります。
ついては、第2次募集及び通信制の課程の入学者選抜(以下2次募集という。)を実施する学校においては、下記の事項に留意し、適切な対応をお願いします。
記
1 入学許可候補者の決定については、令和3年度千葉県公立高等学校第1学年生徒募集定員に基づき、定員の遵守に努めること。
特に、第2次募集等の受検者数が募集人員以下の学校については、特段の理由がない限り入学許可候補者とし、定員を確保すること。
2 入学許可候補者の決定に当たっては、校長は、選抜・評価方法に係る説明責任を果たせるよう、適切に対応すること。特に、いわゆる定員内不合格とする場合は、その理由について明確に説明できるようにすること。その際、入学者選抜の資料を総得点化するなど選抜の透明化を図っていることを踏まえると、「総合的に判断した」のみの理由では、説明責任が十分に果たされているとは言えないことに留意すること。
なお、先の本検査及び追検査を含め、定員内不合格者(受検者数が募集人員又は予定人員以下にも関わらず入学許可候補者とならなかった者)を出した学校については、ヒアリングを行う予定ですので、御承知おきください。