クルマでもロングノーズのスタイリングというのは、如何にも強力なエンジンを搭載したスポーツ(ティ)カーを想像させるものです。鉄道車両でも、かつての主力であった蒸気機関車(SL)は、その構造上から極端なロングノーズのスタイリングとなっており、その運転席に立つ都度、よくぞこんな前方視界が限られた中で運転していたものだと驚きます。
SLの場合、機関士と助手の2名体制で運転していた様ですが、状況に応じて側面窓から身を乗り出し、前後の視界をカバーしていた様ですが、それでも限界があったのだと想像されます。
新幹線車両では、初代の0系だとか300系までは、運転席が車両幅一杯に作られていましたから、運転手が側面窓から後方を覗き見ることもできたのでしょう。しかし、最新の700系等は空気抵抗の低減のためでしょうが、運転席の幅が狭くなっており、仮に側面窓から乗り出して覗いても、視界は得られないことでしょう。
新幹線の開業から余り時を経ない頃、運転席に側面窓から頭を出した運転手が、表示板に頭を強打する事故が発生したことがあるそうです。この原因は、車両限界(車両幅)から僅か15cmという至近に標識を設置していることに気付かずに過ぎていたということにあった様です。
さて、SLの話に戻りますが、運転席(キ ャブ)が後方にあるのが構造上の宿命であるSLですが、流石にアメリカ人は考えることが違います。急傾斜でトンネルの多い路線用に、運転席を前部に設置した(キャブフォワード)SLがあるのだそうです。もっとも、このSLは燃料を石炭でなく重油を使用している様です。