1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報
ふじあざみラインの観光バス横転事故の件だが、先ほど午後7時頃の追加報道で、2つの新しい情報を知ったので、その記事を下記に転載する。
➀心肺停止の当初報道の1名は死亡だという。
②運転手は「ブレーキが効かなかった」という旨の供述をしているという。
これを知り、前回の記述で指摘したブレーキフェードが起きていたいうことが判る。やはりなと思うところだ。
なお、記事中のJAFの方が種々説明しているが、ことクルマの整備と事故に関係した事柄は、こちとらそのキャリア45年の過ごして来た。これら過去の自ら知り得た知見としては、確かにフェードというのは徐々に進行すると云うことはその原理上あるのだが、特に車重の重い大型車は、その境界が乗用車と異なり、かなり際どく立ち上がる傾向があることを指摘したい。
このことは、損保損害調査員と幾多の大型車事故を実際調査してきたり、事故にならずフェード現象を経験した運転手の話しも聞いて来て、その様に確信するのだ。
また、これは自らが若い頃で飛ばし屋だったが、昔の乗用車はドラムブレーキの車両が多いとか、ディスクブレーキでも、現在の様なベンチレーテッドディスクが装着された国産車は希だったが、そのソリッドディスクで、ブレーキ踏力の増加を知覚しつつフェードが起きているなと感じたものだ。
このフェード現象だが、ブレーキ形式がディスク式にしてもドラム式にしても起きうるが、その自然放熱量を超えた発熱が連続すると急激に摩擦材の温度は上昇して行くことで起こる。つまり、ある一定のブレーキ発熱が続いた場合を考えると、その摩擦材が持つ熱容量までは摩擦材の温度は急激に高まらないのだが、熱容量を超えると急激に昇温してしまうのだ。この急激さが大重量車ほど大きいのだと認識している。
摩擦材の熱容量とは摩擦材の体積(もしくは重量と考えても良いだろう)に比例する。そして、同じ体積もしくは重量なら、ドラム式よりディスク式の方がフェードし難いし、フェードした場合の復帰も早い。これは、摩擦材が露出しているかどうかと云う違いにより生じるのだ。
と云うことで、フェードは徐々に進行するのは確かだが、高熱容量を持つ摩擦材ほど今度は冷えにくいという逆の効果もある訳で、大重量の大型車は要注意となるのだ。
このフェードだが、現在のレーシングカーであれば、ストレートエンドの第一コーナー進入で、逆光だったり薄暗かったりすると、フロントディスクが赤熱しつつパットとの摩擦粉が飛び散っているの様相を見ることができるが、この赤熱状態は600℃~700℃程度になっている証左だ。それでも、現代レーシングカーは強烈な減速ができる。これはディスクおよびパットにC/C材(カーボン繊維をカーボン粉と混ぜ高圧高温で焼き固めたもの)だから」、この赤熱状態で最高の摩擦係数が得られるのだ。ところが、通常の鋳鉄(Fc材)ローターだと、ここまで昇温すると摩擦係数は急激に低下してしまう。逆にレーシングカーの純C/C材はローター温度が低いと十分な摩擦係数が得られない。だから、高級スポーツ市販車に使用されるカーボンローターは、C/C材と行っても摩擦面表面にセラミックをコーティングしてあり、このセラミックコート分(1mmもないのではないか)が摩耗すると寿命となるのだ。
ついでにもう一点補足すると、これはカーボンディスクでなくFcローターディスクでも、高性能車はディスク本体とそれをハブに固定するベルに分割した2ピース構成にされ、ディスクとベルはボルト結合だがウェーブワッシャを挟んだある程度自由度を与える構造が採用されている。これは、ディスクが昇温した場合、ベル部分とでディスク部分が一体成型だとディスク部に反りがでて、パットとの摩擦面積が拡大するのを防ぐ目的だそうだ。
なお、現在の高性能車ほど30とか40とかの高扁平率タイヤと大径ホイールを採用して来た訳だが、ディスクブレーキの場合、大径になるほど大きな制動力を働かせ易いとか、径だけでなくその厚みも含め、熱容量を増している。バストラなども、ホイール径でブレーキの最大径は制限されるのだが、低床車など小径ホイールの大型車は特にディスクの厚みを増すことで熱容量の確保を図っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/93/0e6988c7a0a0619650d39d11ceae6816.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/c1/8277387eadae943c8bd20ed2dd9815b6.jpg)
元記事 1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/bd7b2684dcee58dbed971604787f54a0
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【詳報】“フェード現象”起きたか 運転手「ブレーキ効かず」静岡・小山町観光バス横転事故 1人死亡、6人大けが
静岡放送(SBS) 10/13(木) 18:59配信
10月13日昼前、静岡県小山町の県道で観光バスが横転する事故があり、1人が死亡、34人がけがをしました。警察は埼玉県のバス会社の運転手を過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕しました。
13日午前11時50分ごろ、小山町須走の県道「ふじあざみライン」で大型観光バスが事故を起こしたと運転手から通報がありました。バスには乗員、乗客あわせて36人が乗っていて、このうち、70代の女性1人が死亡、女性6人が大けが、28人が軽傷を負いました。警察はバスを運転していた埼玉県飯能市の運転手の男(26)を過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕しました。
捜査関係者によると、容疑者の男は警察の調べに対し容疑を認めていて、「ブレーキが利かなくなった」といった内容 の供述をしているということで、ブレーキの使い過ぎによる「フェード現象」がおきた可能性もあるとみられます。専門家にこのフェード現象について聞きました。
<JAF静岡支部 原康之係長>
「急になることはない。徐々にブレーキが効きにくいなとか、踏んでもなかなか止まりにくいなという感じになるので」
Q.大型車から乗用車でも起こる?
「大型車に限ったことではなくて、一般の乗用車でも起こること」
バスを運行していた会社は埼玉県の「美杉観光バス」で、埼玉県内から富士山や駿河湾などを巡るバスツアー中でした。現場の県道「ふじあざみライン」は、小山町から富士山の須走五合目につながる道路で「馬返しバス停」近くのカーブで横転したとみられます。
ふじあざみラインの観光バス横転事故の件だが、先ほど午後7時頃の追加報道で、2つの新しい情報を知ったので、その記事を下記に転載する。
➀心肺停止の当初報道の1名は死亡だという。
②運転手は「ブレーキが効かなかった」という旨の供述をしているという。
これを知り、前回の記述で指摘したブレーキフェードが起きていたいうことが判る。やはりなと思うところだ。
なお、記事中のJAFの方が種々説明しているが、ことクルマの整備と事故に関係した事柄は、こちとらそのキャリア45年の過ごして来た。これら過去の自ら知り得た知見としては、確かにフェードというのは徐々に進行すると云うことはその原理上あるのだが、特に車重の重い大型車は、その境界が乗用車と異なり、かなり際どく立ち上がる傾向があることを指摘したい。
このことは、損保損害調査員と幾多の大型車事故を実際調査してきたり、事故にならずフェード現象を経験した運転手の話しも聞いて来て、その様に確信するのだ。
また、これは自らが若い頃で飛ばし屋だったが、昔の乗用車はドラムブレーキの車両が多いとか、ディスクブレーキでも、現在の様なベンチレーテッドディスクが装着された国産車は希だったが、そのソリッドディスクで、ブレーキ踏力の増加を知覚しつつフェードが起きているなと感じたものだ。
このフェード現象だが、ブレーキ形式がディスク式にしてもドラム式にしても起きうるが、その自然放熱量を超えた発熱が連続すると急激に摩擦材の温度は上昇して行くことで起こる。つまり、ある一定のブレーキ発熱が続いた場合を考えると、その摩擦材が持つ熱容量までは摩擦材の温度は急激に高まらないのだが、熱容量を超えると急激に昇温してしまうのだ。この急激さが大重量車ほど大きいのだと認識している。
摩擦材の熱容量とは摩擦材の体積(もしくは重量と考えても良いだろう)に比例する。そして、同じ体積もしくは重量なら、ドラム式よりディスク式の方がフェードし難いし、フェードした場合の復帰も早い。これは、摩擦材が露出しているかどうかと云う違いにより生じるのだ。
と云うことで、フェードは徐々に進行するのは確かだが、高熱容量を持つ摩擦材ほど今度は冷えにくいという逆の効果もある訳で、大重量の大型車は要注意となるのだ。
このフェードだが、現在のレーシングカーであれば、ストレートエンドの第一コーナー進入で、逆光だったり薄暗かったりすると、フロントディスクが赤熱しつつパットとの摩擦粉が飛び散っているの様相を見ることができるが、この赤熱状態は600℃~700℃程度になっている証左だ。それでも、現代レーシングカーは強烈な減速ができる。これはディスクおよびパットにC/C材(カーボン繊維をカーボン粉と混ぜ高圧高温で焼き固めたもの)だから」、この赤熱状態で最高の摩擦係数が得られるのだ。ところが、通常の鋳鉄(Fc材)ローターだと、ここまで昇温すると摩擦係数は急激に低下してしまう。逆にレーシングカーの純C/C材はローター温度が低いと十分な摩擦係数が得られない。だから、高級スポーツ市販車に使用されるカーボンローターは、C/C材と行っても摩擦面表面にセラミックをコーティングしてあり、このセラミックコート分(1mmもないのではないか)が摩耗すると寿命となるのだ。
ついでにもう一点補足すると、これはカーボンディスクでなくFcローターディスクでも、高性能車はディスク本体とそれをハブに固定するベルに分割した2ピース構成にされ、ディスクとベルはボルト結合だがウェーブワッシャを挟んだある程度自由度を与える構造が採用されている。これは、ディスクが昇温した場合、ベル部分とでディスク部分が一体成型だとディスク部に反りがでて、パットとの摩擦面積が拡大するのを防ぐ目的だそうだ。
なお、現在の高性能車ほど30とか40とかの高扁平率タイヤと大径ホイールを採用して来た訳だが、ディスクブレーキの場合、大径になるほど大きな制動力を働かせ易いとか、径だけでなくその厚みも含め、熱容量を増している。バストラなども、ホイール径でブレーキの最大径は制限されるのだが、低床車など小径ホイールの大型車は特にディスクの厚みを増すことで熱容量の確保を図っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/93/0e6988c7a0a0619650d39d11ceae6816.jpg)
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元記事 1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/bd7b2684dcee58dbed971604787f54a0
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【詳報】“フェード現象”起きたか 運転手「ブレーキ効かず」静岡・小山町観光バス横転事故 1人死亡、6人大けが
静岡放送(SBS) 10/13(木) 18:59配信
10月13日昼前、静岡県小山町の県道で観光バスが横転する事故があり、1人が死亡、34人がけがをしました。警察は埼玉県のバス会社の運転手を過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕しました。
13日午前11時50分ごろ、小山町須走の県道「ふじあざみライン」で大型観光バスが事故を起こしたと運転手から通報がありました。バスには乗員、乗客あわせて36人が乗っていて、このうち、70代の女性1人が死亡、女性6人が大けが、28人が軽傷を負いました。警察はバスを運転していた埼玉県飯能市の運転手の男(26)を過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕しました。
捜査関係者によると、容疑者の男は警察の調べに対し容疑を認めていて、「ブレーキが利かなくなった」といった内容 の供述をしているということで、ブレーキの使い過ぎによる「フェード現象」がおきた可能性もあるとみられます。専門家にこのフェード現象について聞きました。
<JAF静岡支部 原康之係長>
「急になることはない。徐々にブレーキが効きにくいなとか、踏んでもなかなか止まりにくいなという感じになるので」
Q.大型車から乗用車でも起こる?
「大型車に限ったことではなくて、一般の乗用車でも起こること」
バスを運行していた会社は埼玉県の「美杉観光バス」で、埼玉県内から富士山や駿河湾などを巡るバスツアー中でした。現場の県道「ふじあざみライン」は、小山町から富士山の須走五合目につながる道路で「馬返しバス停」近くのカーブで横転したとみられます。