表題の様な貼り付き現象ですが、例えば寒冷地等でサイド(パーキング)ブレーキを掛けると、ブレーキシューがドラムに張り付いて開放されなくなるケースが知られています。似た様なケースとして、比較的長期間放置しておいたクルマのサイドブレーキが貼り付いて開放されず、発進できないなんていうことが今でも時々あるのだと想います。
特に、トラック系のクルマのサイドブレーキは、通称センターブレーキと呼ばれますが、トランスミッション後部に装着されているものが多くありますが、このタイプが比較的その様な貼り付きを起こし易い様に感じます。そんな、貼り付きを起こしたのを気づかず、無理して動かそうとした場合、センターブレーキのバックプレートを固定しているボルトを飛ばしてしまうことになります。それは、トランスミッションのエクステンション(後部)ハウジングの割損となってしまい、結構費用を要してしまう場合があります。
その昔、エンジン屋をやっていた頃、ランクルで多分その様な状態を生じたクルマで、パーキングブレーキ全体が廻されたため、ブレーキワイヤーまでが引き千切られた事例を見たことがあります。この際は、現場でリヤプロペラシャフトを取り外し、FDスイッチを入れてFF状態で乗って帰社して、その後の修理を行った記憶があります。
この様な、ブレーキ(ドラムタイプ)の貼り付きは、ドラム内の発錆等で生じるのでしょうが、出張整備等で、そうと類推できれば、片手ハンマーでドラム外部を打撃しショックを与えれば、大体解消してしまいます。
一方、クラッチの貼り付きですが、あまりトラブルとして表出するケースはないのですが、生じたとしても、始動時等の強力な回転差で、剥がれてしまうことによるのだと想像されます。
なお、二輪車のクラッチは、レーシングエンジンと同様にスペース状や回転イナーシャの要求から、比較的小径の多板クラッチが使用されるのですが、長期間の放置で貼り付きが生じ易い様です。これも、ショック療法となりますが、前後ブレーキでしっかり制動し、ニュートラルで回転を上げ、クラッチレバーを切った状態で、シフトすることで大体解消する様です。
もう一つの引きづり現象ですが、何年か前に大型トラックメーカーの新車で、ブレーキ引きづりから発熱してタイヤに着火し、車両火災になるというリコールがありましたが、大型トラック等で生じると非常に危険なものです。
なお、乗用車でも、中にはディスクプレートが赤熱する程までになる場合がありますから、この様な現象を生じたまま走行すると、フェード現象やベーパーロックを生じることにより、本来の制動力が得られず危険を生じる恐れがあります。
これらブレーキの引きづりは、大体ホイールシリンダの戻り動作が悪化することで生じます。長期間ホイールシリンダやディスクキャリパーシリンダの分解清掃を行い、カップやシール等のラバー部品の取替をしていない場合は要注意であると思います。
また、クラッチ機構の引きづりですが、これはクラッチの切れが悪いというトラブルとなります。現象としては、停止状態でのシフト操作が重くなることや、走行中の変速操作が重くなることでしょう。また、ノンシンクロのバックギヤへのシフトで、ギヤ鳴りが生じ易いということもあるでしょう。
これらクラッチの切れ不良の原因としては、クラッチ板の振れが大きい、スプライン部の動きが円滑でない、クラッチカバーの爪(ダイヤフラム式)の高さの不揃い等が一般的な原因と想定されます。