EDR装置が訴訟にも使われ出していることを感じる判決
下記に転載した交通事故の刑事裁判報だが、同じ事故を2つのメディアが伝えている。その概ねとして、判決で述べている内容は、被告は速度130キロで運転、交差点手前50mで速度を85キロに減じてものの赤信号無視で交差点に突っ込み、右から青信号の軽貨物と衝突し死亡させた。
ここで、単なる業過傷死罪でなく危険運転致死傷罪で求刑10年、判決8年というかなり重い判決を受けていることが判る。そもそも一般路で130キロも出すということは、制限速度の2倍を超えていると云うところで、これに該当するという理由付けなのだろう。
該当者には反省してもらう他ないが、一方、近年やたら重罰化の動きが多い様にも思えるが、あまりにも重罰化を大きくすることは、司法の裁量権の拡大という意味で、脅威を感じると感も芽生える。
この速度への重罰化だが、近年道路整備が進み郊外の国道バイパスなどを走行すると、車列としての車両全体の流れが、平行して走る高速道を部分的にではあるが上回る様な状態で皆が100km/h前後で走っている場合が現実として多々あるのは理解されるところだろう。道路を走行する場合、ある程度流れに沿う運転の方が安全という考え方もでき、こういう道路で制限速度で走り、後続車を苛つかせて煽り運転の端緒を生み出すリスクも考慮せねばなるまい。
さて、本題だが事故前の速度をある程度明確に認定し、しかも130キロ、85キロと速度変化までを認定すると云うのは、従来だとあまりなかった様に思える。従来だと、それなりの鑑定だとかで衝突速度をある程度推定し、そこから限界的な制動距離などを見積もって、積算することで衝突前の速度をある程度推定するというところが限界であったと想像する。
この様に事故前の速度が130キロであって、交差点50m手前で85キロに減じたというところは、どう見ても現代車でエアバッグ装備車ならほぼ装備なされているEDR(イベントデータレコーダー)という装置に記録されたデータを読み出して証拠に利用していることが明らかだろう。
ここにJEDRの概要および技術要件として国交省でH20年に策定された基準の抜粋を1-4として添付する。
EDR機能の概略としては、1の通りで示されている。2-3が技術要件だが、この項目要件を示す2内のデータ要素4番目に車両表示速度というのがあるのだが、-5.0から0secと記されてるのが車両速度計に表示される速度と考えて良いだろう。
ここで-5.0と云うのは、トリガー速度を0として、それ以前の5秒間をメモリーに記録するという動作をEDRでは行っていることだ。このことは、エアバッグが開いた場合と開かない場合でも、一定のしきい値以上のデルタVの変化(150msec間隔で⊿V8km/h以上)の場合、2件以内を限度としてメモリーに上書き記録されていくと記されている。また、エアバックが展開した場合には、そのデータは2回以内を限度として記録するが、上書きはされない機能(書き込み禁止)を持つ。なので、この2-3の諸項目にすべてについては、エアバッグが開く開かないに関わらずメモリーに記録されるのだが、しきい値以上で記録されてもエアバッグが開かない場合は、古い方から上書きされる。エアバッグが作動した場合は、最大でも2件以内までの記録を書き込み禁止にして上書きをさせない。と解される。
なお、同表の1と2のデルタV縦方向と最大デルタV縦方向は、トリガーしきい値(同表では時間0)で記録開始し、最長250msec(0.25秒)までを10msec毎の速度を記録して行くとのことだ。こちらのデルタVとか最大デルタVはデルタV(速度変化率)を表すが、加速度センサーより検出しているものだ。
いずれにしても、警察もしくは検察に付随する科捜研や科警研などの機関では、交通事故におけるEDRデータとしては、この車両表示速度が速度値としてもっとも利用されるところだろう。なお、ペダルの踏み間違いだとか動作の判定に、エンジンスロットル(アクセル)開度、ブレーキ・オンオフ、ステアリングホイール角(転蛇角)-250CWから+250CCWとはCW(Crickwise:時計回り)、CCW(CouterCrickwise:半時計回り)を利用することだろう。
ここで衝突前5秒間を記録する車両表示速度だが、これは該当車のスピードメーター表示速度と同意となるが、車輪の回転数の相関する逓倍値となるのだが、必ずしも実速度とはいえない場合があることを注意しなければならないだろう。このことは、3つ程度が想定でき、➀速度計の誤差、②車両のABS装置の介入により車輪ロック制御されている場合、③当該車が横滑りなどしている場合となる。この詳細は以下となる。
➀速度計の誤差
車両の検査時など速度計が40km/h時の実車速をテスターで読み取り、その値が以下の計算式の範囲かという基準がある。
平成19年1月1日以降製造の車(軽自動車・二輪車等を除く)の場合、
10(V1-6)/11≦V2≦(100/94)V1 (V1=当該車の速度計、V2=基準速度計)
例として、該当車の指示速度を40km/h前提で、代入して計算すると、30.9km/h以上、42.5km/h以下となる。
②車両のABS装置の介入により車輪ロック制御されている場合
ABSとはアンチロックブレーキシステムのことで、急制動中に車輪がロックしてしまうと、ステアリングでの進行方向制御が不能になるため、車輪のロック制御を行い路面とタイヤのスリップ率を20%程度に制御する装置。これが介入状態では、車輪はロックしないが、小刻みにロック制御されるために、一定低めの速度表示値になると想像できる。
③当該車が横滑りなどしている場合
横滑りとは、スピンとかドリフトなどという現象を伴い、車体の進行方向と車体の向きが不一致となる現象を指す。一番判り易い極端な事例で、ある程度の速度以上で、操舵量を多めに与えたりすると、車体が横向きになりそのまま直前の進行方向へ進むが、90度真横になり前進したとすると、車輪の回転数はゼロであり表示速度も同じだが、実速度はタイヤの摩擦係数(μ)×重力加速度の積での減速度となる。
【ソースURL】
イベントデータレコーダー(J-EDR)の技術要件を策定しました。
URL:https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/09/090328_.html
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時速130キロで運転し、信号無視 死亡事故を起こした男に懲役8年
朝日新聞 高田純一2022年7月13日 10時50分
和歌山市の交差点で昨年11月に衝突事故を起こし、相手運転手の男性を死なせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた無職宮原裕人被告(24)=紀美野町動木=の判決が12日、和歌山地裁であった。松井修裁判長は懲役8年(求刑10年)を言い渡した。
判決によると、宮原被告は昨年11月15日午前4時50分ごろ、同市吐前で軽乗用車を時速約130キロで運転し、県道交差点に向かって進行。赤信号を無視し、右側から来た同市の男性(当時55)が運転する軽貨物車と衝突し、男性を死なせた。
松井裁判長は、「赤信号に気づきながら時速約130キロで進行し、被害者の車に衝突させたのは危険かつ悪質である。被告は日頃から交通法規を軽視していたなか、当日も安易に交通違反を繰り返し、信号無視や速度超過に対するためらいのなさがうかがえ、相当期間の実刑は免れない」などと述べた。(高田純一)
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時速130キロで運転し信号無視 死亡事故を起こした男に懲役8年 和歌山地裁「事実を認め反省している」
ABCテレビ 7/12(火) 19:16配信
時速130キロで信号無視、死亡事故を起こした男に懲役8年の判決です。
宮原裕人被告(24)は去年11月、和歌山市内の県道で赤信号を無視して交差点の手前50メートルまで時速130キロで進行し、減速したものの時速85キロで交差点に突っ込み、右から青信号で進んできた軽四貨物自動車と衝突。
運転していた当時55歳の男性を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われていました。
12日の裁判で、和歌山地裁は「犯行は危険かつ悪質で、信号無視や速度超過に対するためらいのなさがうかがわれるが、事実を認め反省をしている」として、宮原被告に懲役8年の実刑を言い渡しました。
#交通事故厳罰化 #EDRデータの証拠採用
下記に転載した交通事故の刑事裁判報だが、同じ事故を2つのメディアが伝えている。その概ねとして、判決で述べている内容は、被告は速度130キロで運転、交差点手前50mで速度を85キロに減じてものの赤信号無視で交差点に突っ込み、右から青信号の軽貨物と衝突し死亡させた。
ここで、単なる業過傷死罪でなく危険運転致死傷罪で求刑10年、判決8年というかなり重い判決を受けていることが判る。そもそも一般路で130キロも出すということは、制限速度の2倍を超えていると云うところで、これに該当するという理由付けなのだろう。
該当者には反省してもらう他ないが、一方、近年やたら重罰化の動きが多い様にも思えるが、あまりにも重罰化を大きくすることは、司法の裁量権の拡大という意味で、脅威を感じると感も芽生える。
この速度への重罰化だが、近年道路整備が進み郊外の国道バイパスなどを走行すると、車列としての車両全体の流れが、平行して走る高速道を部分的にではあるが上回る様な状態で皆が100km/h前後で走っている場合が現実として多々あるのは理解されるところだろう。道路を走行する場合、ある程度流れに沿う運転の方が安全という考え方もでき、こういう道路で制限速度で走り、後続車を苛つかせて煽り運転の端緒を生み出すリスクも考慮せねばなるまい。
さて、本題だが事故前の速度をある程度明確に認定し、しかも130キロ、85キロと速度変化までを認定すると云うのは、従来だとあまりなかった様に思える。従来だと、それなりの鑑定だとかで衝突速度をある程度推定し、そこから限界的な制動距離などを見積もって、積算することで衝突前の速度をある程度推定するというところが限界であったと想像する。
この様に事故前の速度が130キロであって、交差点50m手前で85キロに減じたというところは、どう見ても現代車でエアバッグ装備車ならほぼ装備なされているEDR(イベントデータレコーダー)という装置に記録されたデータを読み出して証拠に利用していることが明らかだろう。
ここにJEDRの概要および技術要件として国交省でH20年に策定された基準の抜粋を1-4として添付する。
EDR機能の概略としては、1の通りで示されている。2-3が技術要件だが、この項目要件を示す2内のデータ要素4番目に車両表示速度というのがあるのだが、-5.0から0secと記されてるのが車両速度計に表示される速度と考えて良いだろう。
ここで-5.0と云うのは、トリガー速度を0として、それ以前の5秒間をメモリーに記録するという動作をEDRでは行っていることだ。このことは、エアバッグが開いた場合と開かない場合でも、一定のしきい値以上のデルタVの変化(150msec間隔で⊿V8km/h以上)の場合、2件以内を限度としてメモリーに上書き記録されていくと記されている。また、エアバックが展開した場合には、そのデータは2回以内を限度として記録するが、上書きはされない機能(書き込み禁止)を持つ。なので、この2-3の諸項目にすべてについては、エアバッグが開く開かないに関わらずメモリーに記録されるのだが、しきい値以上で記録されてもエアバッグが開かない場合は、古い方から上書きされる。エアバッグが作動した場合は、最大でも2件以内までの記録を書き込み禁止にして上書きをさせない。と解される。
なお、同表の1と2のデルタV縦方向と最大デルタV縦方向は、トリガーしきい値(同表では時間0)で記録開始し、最長250msec(0.25秒)までを10msec毎の速度を記録して行くとのことだ。こちらのデルタVとか最大デルタVはデルタV(速度変化率)を表すが、加速度センサーより検出しているものだ。
いずれにしても、警察もしくは検察に付随する科捜研や科警研などの機関では、交通事故におけるEDRデータとしては、この車両表示速度が速度値としてもっとも利用されるところだろう。なお、ペダルの踏み間違いだとか動作の判定に、エンジンスロットル(アクセル)開度、ブレーキ・オンオフ、ステアリングホイール角(転蛇角)-250CWから+250CCWとはCW(Crickwise:時計回り)、CCW(CouterCrickwise:半時計回り)を利用することだろう。
ここで衝突前5秒間を記録する車両表示速度だが、これは該当車のスピードメーター表示速度と同意となるが、車輪の回転数の相関する逓倍値となるのだが、必ずしも実速度とはいえない場合があることを注意しなければならないだろう。このことは、3つ程度が想定でき、➀速度計の誤差、②車両のABS装置の介入により車輪ロック制御されている場合、③当該車が横滑りなどしている場合となる。この詳細は以下となる。
➀速度計の誤差
車両の検査時など速度計が40km/h時の実車速をテスターで読み取り、その値が以下の計算式の範囲かという基準がある。
平成19年1月1日以降製造の車(軽自動車・二輪車等を除く)の場合、
10(V1-6)/11≦V2≦(100/94)V1 (V1=当該車の速度計、V2=基準速度計)
例として、該当車の指示速度を40km/h前提で、代入して計算すると、30.9km/h以上、42.5km/h以下となる。
②車両のABS装置の介入により車輪ロック制御されている場合
ABSとはアンチロックブレーキシステムのことで、急制動中に車輪がロックしてしまうと、ステアリングでの進行方向制御が不能になるため、車輪のロック制御を行い路面とタイヤのスリップ率を20%程度に制御する装置。これが介入状態では、車輪はロックしないが、小刻みにロック制御されるために、一定低めの速度表示値になると想像できる。
③当該車が横滑りなどしている場合
横滑りとは、スピンとかドリフトなどという現象を伴い、車体の進行方向と車体の向きが不一致となる現象を指す。一番判り易い極端な事例で、ある程度の速度以上で、操舵量を多めに与えたりすると、車体が横向きになりそのまま直前の進行方向へ進むが、90度真横になり前進したとすると、車輪の回転数はゼロであり表示速度も同じだが、実速度はタイヤの摩擦係数(μ)×重力加速度の積での減速度となる。
【ソースURL】
イベントデータレコーダー(J-EDR)の技術要件を策定しました。
URL:https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/09/090328_.html
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時速130キロで運転し、信号無視 死亡事故を起こした男に懲役8年
朝日新聞 高田純一2022年7月13日 10時50分
和歌山市の交差点で昨年11月に衝突事故を起こし、相手運転手の男性を死なせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた無職宮原裕人被告(24)=紀美野町動木=の判決が12日、和歌山地裁であった。松井修裁判長は懲役8年(求刑10年)を言い渡した。
判決によると、宮原被告は昨年11月15日午前4時50分ごろ、同市吐前で軽乗用車を時速約130キロで運転し、県道交差点に向かって進行。赤信号を無視し、右側から来た同市の男性(当時55)が運転する軽貨物車と衝突し、男性を死なせた。
松井裁判長は、「赤信号に気づきながら時速約130キロで進行し、被害者の車に衝突させたのは危険かつ悪質である。被告は日頃から交通法規を軽視していたなか、当日も安易に交通違反を繰り返し、信号無視や速度超過に対するためらいのなさがうかがえ、相当期間の実刑は免れない」などと述べた。(高田純一)
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時速130キロで運転し信号無視 死亡事故を起こした男に懲役8年 和歌山地裁「事実を認め反省している」
ABCテレビ 7/12(火) 19:16配信
時速130キロで信号無視、死亡事故を起こした男に懲役8年の判決です。
宮原裕人被告(24)は去年11月、和歌山市内の県道で赤信号を無視して交差点の手前50メートルまで時速130キロで進行し、減速したものの時速85キロで交差点に突っ込み、右から青信号で進んできた軽四貨物自動車と衝突。
運転していた当時55歳の男性を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われていました。
12日の裁判で、和歌山地裁は「犯行は危険かつ悪質で、信号無視や速度超過に対するためらいのなさがうかがわれるが、事実を認め反省をしている」として、宮原被告に懲役8年の実刑を言い渡しました。
#交通事故厳罰化 #EDRデータの証拠採用