私の思いと技術的覚え書き

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ヘッドランプの話

2008-12-21 | 車両修理関連

 最近のクルマのヘッドランプは、いわゆる異形ヘッドランプとして様々な形状を持っています。クルマの歴史を眺めれば、今から30年位前までは、ほとんど丸形か四角の、2灯もしくは4灯式のヘッドランプが採用されていたものでした。これらヘッドランプは、シールドビームと呼ばれる、ヘッドランプ全体がガラス製で一体成形された電球という構造のものがほとんどだったと思います。

 その後、ハロゲン式バルブの普及と共に、様々な異形形状のヘッドランプ形状の製品が開発されて来たものです。そして、そのハロゲンバルブも、10年位前から、HID方式という高圧放電により発光する、より高輝度なものが普及しつつあります。また、次世代のヘッドランプとして、高輝度LEDを採用した製品も、登場し始めています。

 ところで、昨今の異形ヘッドランプですが、その透明レンズは、ガラスでなく樹脂が使用されています。その材質の多くはポリカーボネイト樹脂(PC)ですが、その外表面は、耐光性や耐キズ付き性を向上させるためコーティングが施されています。このコーテングですが、簡単に云えばクリア塗装が施されていると云って良いと思います。

 ここで、ちょっと後輩アジャスター向けに、偉そうに若干記しておきます。よく立会車両において、ヘッドランプレンズに僅かなキズが生じたクルマを見ることがあるでしょう。私も、そんなクルマを相当数見て来ました。そんな時、必ず見積担当者に云うのが「磨いて見てよ」の言葉なのです。大体が、見積担当者が、その場で「落ちるかななあ?」とい云いながら塗装部門から超微粒子コンパウンドと柔らかいウエスを借りてきて手作業で数分も磨いてくれるものです。そんな姿を見ながら「落ちたじゃない、良かった」と私はお礼を云ったものです。なお、見積にはヘッドランプレンズHedlamp_2磨き0.5h等と計上を忘れぬことが礼儀です。

 さて、ちょっと古いクルマを眺めると、ヘッドラン プレンズが黄変したり曇りが生じているものを結構見掛けます。幾ら、ボデーの塗装がピカピカでも、ヘッドランプはクルマの目であり、魚と同じで目が死んでいては、クルマ全体の雰囲気が大きく見劣りしてしまいます。

 そんな、クルマの目を直そうと、ヘッドランプレンズだけを取替しようにも、多くのクルマがレンズ単体の部品補給がない場合がほとんどです。しかも、ヘッドライトレンズとボデーが接着(溶着)されてしまっていて分解できないクルマも多くあります。

 分解できないクルマの一つとして、ベンツがありますが、このクルマでは衝突時の慣性でヘッドライト部には入力していないのに、内部のリフレクター部分が外れてしまう場合があります。リフレクター部分は、光軸調整のため、一方がアジャスト機構に、反対側がボールジョイント機構に勘合されているのですが、このボールジョイント部が外れてしまうために起こる現象です。しかし、流石にベンツ社はこのことをちゃんと把握していて、専用工具が用意されています。専用工具と云っても大したものではなく、ヘッドランプケース裏側のバルブ交換用のブーツを取って、その開口部からリフレクターの該当部分を引っかけて引っ張ることで、ボールジョイントの勘合を直すという簡単なものです。

 ヘッドランプが分解できれば、レンズの表側だけでなく裏側を清掃したり、反射鏡(リフレクター)の曇りを清掃したりもできるのですが、そんな作業ができないクルマが多くなって来てしまっています。ヘッドランプ内部の汚れは、水洗い等して乾燥させる位しかなさそうですが、外面の黄変や曇りはリペアが可能です。

 その方法の一つですが、カー用品店で、ヘッドランプ用のコーテング剤が販売されていますが、私は試したことはなく評価しかねますが、効果の持続性には懐疑的な思いを持ちます。

 もう一つの方法として、クリア塗装を再施工することでリペアすることができます。このクリア塗装の再施工ですがイサム塗料で、ヘッドランプ専用のリペア用塗料が販売されている様ですが、何もこれに限らず利用可能だろうと思っています。但し、使用塗料でのポリカーボネイト樹脂の耐溶剤性の点を確認することと、密着性のために樹脂との間にプライマーの塗装(極薄くて良い)が推奨されること等の点で留意が必要と思います。塗料の中に耐スリ傷クリアと云うのがありますが、これなどは耐溶剤性の問題がなければですが、ベストな選択となろうと思います。


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