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「政治資金パーティー問題」は単なる「不記載」なのか?・郷原信郎

2024-02-06 | 事故と事件
政治資金の「政治資金パーティー問題」は不記載はヤミな事だろうか?
 政治のヤミが世間一般を副因する論理およびデラダメな世界だろう。

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「政治資金パーティー問題」は単なる「不記載」なのか?安倍派幹部の「虚言」か、マスコミの「歪曲報道」か
郷原信郎総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士
1/21(日) 11:43
 東京地検特捜部が、昨年12月から、全国からの応援検事数十名を動員し、かつてない大規模捜査態勢で行ってきた、自民党各派閥の「政治資金パーティー裏金事件」、先週金曜日(1月19日)に、「裏金受領国会議員」3名、派閥と議員の政治団体の会計責任者ら5名の8名が起訴(略式起訴を含む)され、捜査は概ね終結したと報じられた。

 これを受け、不起訴処分となった安倍派(清和政策研究会)の幹部が、次々と記者会見を行い、「会計責任者が起訴された刑事事件に関することについての言及は控える」と言いつつも、今回の事件に対する説明を行った。

 塩谷立座長は、

「(安倍派事務局長側の)誤った説明など長年にわたる事務的なミスリードにより、所属議員事務所の誤った処理をさせた」

と説明し、また、前事務総長の西村康稔氏は、X(旧ツイッター)で、

「清和会の収支報告書の作成と提出は、会計責任者である事務局長において行ってきており、収支報告書に記載しないことについても、長く慣行的に行われてきたようでありましたが、私たち幹部も、今回の問題が表面化するまで知りませんでした」
「事務局から関係政治団体の収支報告書への記載は不要だとする旨の説明が過去からなされていたと聞いていますが、このため、いわゆる裏金作りなどの意図はなかったであろうに、特に所属の若い議員に大きな傷を与えてしまった」

などと述べて、「裏金作り」の意図を否定している。

 これら安倍派幹部の説明は、「政治資金の寄附」として、安倍派と所属議員の政治団体の政治資金収支報告書に記載すべきであった、(記載しておけば何の問題もなかった)のに、(何らかの事情で)記載しなかったという「収支報告書の記載上の事務的な問題」であった、との点で一致している。

 その説明のとおりであるとすると、そもそも今回の問題は、「政治資金パーティー券のノルマ超の売上」について、安倍派から所属議員に「裏金」が供与されたということではなく、通常の収支報告書に記載する「表の政治資金」と同様の性格の寄附が行われ、それが、通常の政治資金と同様に使われただけだったことになる。

 そもそも、収支報告書で公開しない前提で資金をやり取りし、実際に、その事実を収支報告書で公開しないということ自体が政治資金規正法上、全く許されないものであることは明らかだ。

 しかし、それが、常に、実質的に「裏金」と評価されるとは限らない。一般的には、「裏金」というのは、単なる「収支報告書への不記載」にとどまるものではない。「表に出さない金」「領収書不要の金」であり、少なくとも「政治活動費」として使途を公開することに支障があるからこそ「表の政治資金」とは区別して扱うものである。


 私の検事時代での経験で言えば、20年前、長崎地検次席検事時代に捜査を指揮した自民党長崎県連事件では、県連幹事長が、収支報告書で公開する「表の寄附」と公開しない「裏の寄附」とを区別してゼネコンから献金を受領し、「裏金」は、表に出せない飲食代等に費消していたこと、年に1回開催する県連政治資金パーティーの収入の一部を収支報告書に記載しないで「裏金」化し、党本部から招いた党幹部への数百万円に及ぶ高額のお土産品の購入代に充てるなどしていたことが明らかになった。

 そういうものが典型的な「裏金」であり、それは資金を受け取る時点で、表の金とは明確に区別して管理され、使用するのが通常だ。

 キックバックを行う当事者双方が、そのような「裏金」と認識して授受したのであれば、その趣旨と、それを所属議員事務所でどのように取り扱うかについて、所属議員が認識していないことはあり得ない。

 安倍派幹部の説明は、「ノルマ超のパーティー収入のキックバック」が、上記のような「裏金」であることを全面的に否定するもので、それが真実だとはにわかに信じ難いのであるが、仮に、そうであったとすれば、昨年12月から約1か月半にわたって、日本の政界に大激震を生じさせ、「令和のリクルート事件」とまで言われたこの「事件」とはいったい何だったのか、ということになる。

 当初、神戸学院大学上脇博之教授が、自民党各派閥の政治資金パーティーにおいて、パーティー券を購入した政治団体側の収支報告書記載では20万円超となっているのに、派閥の収支報告書には記載されていないものが、5派閥で合計約4000万円あるという「形式的な違反」について告発が行われたことを受けての東京地検特捜部の捜査が、「キックバック裏金事件」に発展していった段階で、各派閥、特に安倍派の会計責任者は、どのように供述していたのか、それを受けて「キックバック」を受領していた議員の事務所の会計担当者の聴取が行われた際には、どのような供述が行われていたのか。

 安倍派から所属議員へのキックバックを「収支報告書に記載しない」ということの意味が、「通常の政治資金と同様に扱うが、単に収支報告書に記載しない」という趣旨なのか、「裏金」として、通常の資金とは異なる領収書不要の金として扱ってよい、つまり「自由に使ってよい金」という趣旨なのか、安倍派事務局長と所属議員の会計担当者は、どのように供述していたのか。

 その頃から、安倍派から所属議員に「裏金」がわたっていた、との報道が行われるようになり、松野博一官房長官についても「1000万円裏金受領」が報じられ、国会での野党側の追及に「答弁差し控え」を繰り返した松野氏は官房長官辞任に追い込まれた。そして、その後、岸田文雄首相は、安倍派の大臣・副大臣8人全員を事実上更迭する事態に至った。

 この際の報道のキーワードとなったのが「裏金」であり、その政治資金パーティーのノルマ超売上のキックバック問題が、単なる収支報告書の不記載ではなく、「裏金」の実体があるからこそ、そのような言葉が使われているだろうと誰しも思ったはずだ。

 このような情報が安倍派側からは出ようがなく、検察側からのリークである可能性が高いが、リークしたかどうかはともかく、検察側が、もし「裏金」ではなく単なる「不記載」だと認識していたのであれば、非公式で行われる東京地検次席検事の定例会見等において、その点を是正するのが当然であろう。

 改めて考えてみると、今回の事件では、安倍派幹部や所属議員にキックバックされた「裏金の金額」が連日のように報じられてニュースや新聞紙面をにぎわし、世の中は、その「裏金」に対して怒りを爆発させたが、その割には、キックバックされた「裏金」の使途の話が全く報じられない。また、逮捕された池田佳隆衆議院議員の被疑事実でも、在宅起訴された大野泰正参議院議員の起訴事実でも、「虚偽記入」とされているのは、収入欄に、キックバックされた「安倍派からの寄附」を記載しなかったことだけだ。支出欄の虚偽記入は全く問題にされていない。結局、それらには、「裏金」の実体は全く含まれておらず、寄附についての不記載だけの問題であるようにも思える。

 しかし、一方で、もし、単なる「収支報告書不記載」に過ぎなかったのであれば、もともとは形式的な違反に過ぎなかった上脇氏の告発事件の検察捜査で派閥の会計担当者の聴取が行われるようになった際に、自民党側が動揺し、騒ぎが大きくなっていたのはなぜなのか、特に、自民党側の認識や状況を正確に把握しているはずの政治ジャーナリストの田崎史郎氏などは、当初から、

「この事件は大事件になる。『令和のリクルート事件』になる」と述べていた(12月3日、BS朝日「激論クロスファイア」)。

 しかも、全国から、年末年始休暇返上で数十人もの応援検事を集めた大規模捜査態勢で捜査が行われたことからしても、「裏金」の実体があったことについて当事者の供述がなく、単なる「不記載事件」としての証拠しかなかったとは思えない。

 安倍派幹部が、口を揃えて説明しているように、単なる「不記載」であり、裏金の実体はないのか、それとも、これまで報道されてきたように、通常の政治資金とは異なる「表に出せない金」としての「裏金」なのか、それは、事実上終結した検察捜査の中で、安倍派の事務局長の供述、所属議員の会計責任者等の供述によって明らかになっているはずである。

 前者であれば、この事件について、昨年12月以来報道されてきた「裏金報道」は、虚偽とまでは言えないが、実体とは大きく異なり事実を歪曲する報道だったことになる。逆に、後者であれば、安倍派幹部は、この期に及んでも、今回の事件の核心部分について重大な「虚偽説明」をしていることになる。

 この点は、国民にとって、日本の政治・社会に大きな影響を生じさせる重大な事項であり、検察当局は、起訴された国会議員、会計責任者等の公判を待つまでもなく、現時点で明らかにできる事項だけでも説明をすべきである。

 それをしないのであれば、法務大臣が一般的指揮権(検察庁法14条本文)に基づいて、本件に対する適切な対応を行うよう検察当局に指示すべきであろう。


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