私の思いと技術的覚え書き

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EMP技術は戦争を一変させる

2021-02-01 | コラム
 EMP(electro magnetic pulse)の略で日本語だと電磁パルスのことを指す。このEMPは、強いレーダー波とか無線波等も電磁波ではあるが、その電界強度が桁違いに大きいものを指す。当初問題にされたのは、株爆発を高々度で行った場合のEMPの脅威が云われていた。例えば、アメリが合衆国上空の高々度で核爆発を生じると、額爆発の爆風熱などの影響は地上にはほとんど盈虚を与えないが、この際に生じる高強度EMPは、地上の主に細密化した電子機器を破壊する作用をもたらすという。つまり、ファラデーの法則に磁力線の中に位置した導体には電流が生じるのだが、電子機器等細い配線だとか、LSI内部の配線は今やnm(ナノメートル)という1ミクロンより遙かに細い線幅で製造されているが、そこに過剰な電流が流れることで、機器を破壊するということらしい。

 だから、アメリカ合衆国上空の遙か上空高々度で生じたEMPは、合衆国全体の電子機器を永久的もしくは一時的に動作不能にしまう可能性があるという訳だ。そうなると、地上を走るクルマも鉄道も、空を飛ぶ航空機も、今やマイクロプロセッサーを基本としたデジタル制御機器で運航しているから、直ちに停止するとかコントロール不能に陥り継続可能は困難となる。

 軍事的な基本システムとなるレーダーシステムも、様々な信号処理で、照準(ロックオン)や位置情報を検出している訳だが使用不能になってしまうだろう。軍事用途で唯一無事なのは、深海を航行中の潜水艦には、電磁波は届かないから影響はない訳だが、誘導ミサイルなどで長距離を飛翔するものは、GPS衛星の位置情報で、制御しているものは利用不可能となるだろう。あと、ソナーシステムは無事だが、本部との無線通信(衛星経由も含め)を行おうとしても、自艦のシステムは問題なくても、本部側の通信システムがダメなら、艦の統制は取れなくなってしまうだろう。

 このEMPだが、今までは高々度核による危険を考えれば良かった訳だが、地上の兵器の一種として、特定の放射範囲で強い電磁パルス(EMP)を放出できる機器が開発されつつあるらしい。これは、例えば大量のドローン攻撃を受けた際、それらに向けてなぎ払うようにEMP放射し、一気に殲滅して脅威を除去するなどだ。

 また、イージス艦は、艦上の4面固定レーダーにより電子的に艦の周囲360度を高速スキャンしつつ、多数の目標をマークしつつ追尾し、必要に応じて誘導ミサイルで撃破するというものだが、EMP攻撃を受けた際、レーダーが使用不能となったとすれば、ほとんど無力の艦とならざるを得ない。

 空母上から飛び立つ最新型戦闘機や爆撃機も、まず操縦系統にマイクロプロセッサーを基本としたフライバイワイヤの飛行制御機器が動かなければ、飛ぶことはできない。また、飛べたとしてもFC(標準)システムも誘導システムもなしに、攻撃も防御もできなくなる。

 このEMP環境下で動けるのは、まったくデジタル制御化されてない、昔のディーゼルエンジンとかSLだろう。ただし、火力や原子力などのエネルギー発生機器だとか、高度な自動化された工業生産システムなどは、その制御に主にフィードバック制御と呼ばれる、出力の変化に応じて入力を変化させ、水準を保つ制御として電子化なされているため、復旧までには時間を要すことだろう。

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